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砂漠のシモン (1965)

SIMON OF THE DESERT/SIMON DEL DESIERTO

監督
ルイス・ブニュエル
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  • みたログ 49

3.28 / 評価:40件

砂漠のシモン

  • 一人旅 さん
  • 2016年9月22日 0時52分
  • 閲覧数 720
  • 役立ち度 4
    • 総合評価
    • ★★★★★

第26回ヴェネチア国際映画祭審査員特別賞。
ルイス・ブニュエル監督作。

砂漠の真ん中にある柱の上にひたすら立ち続ける苦行をしている修行者・シモンを待ち受ける運命を描いたドラマ。

ルイス・ブニュエルのメキシコ時代最後の作品。長編ではなく中編で、上映時間は50分に満たない。主人公シモンは実在の柱頭修行者、聖人シメオンをモデルにしているが、もちろん伝記的な内容ではなく、ブニュエルらしいシュールレアリスムと宗教に対する独自の考察が盛り込まれた摩訶不思議な傑作に仕上がっている。

物語は、砂漠にそびえる柱の頂上で6年以上もの年月を過ごす修行者・シモンの姿を描く。シモンの修行は極限の苦行で、食べ物はレタスだけだし水もほとんど飲まない。そうしたシモンの姿を見て、他の聖職者や民衆は尊敬の眼差しを向けるが、姿を変えながら度々現れる悪魔の誘惑がシモンを待ち受ける。驚きなのが、その悪魔の描き方。セーラー服を着た若い女(悪魔)が近付き、シモンの頬に長い舌を密着させるという妖しい演出が強烈。悪魔は度々姿を変えて現れ、髭面の聖職者になったり、半裸の女になって乳を丸出しにしながら誘惑するといったきわどくエロティックな演出に衝撃を受ける。

また、映像的にシモンの姿を地上から見上げるショットが多い。民衆とシモンの間の物理的距離感が強調されているような映像が印象的で、それは両者の間で信仰と人生に対する姿勢の決定的な違いが暗に示されているようにも見える。シモンは神に近づくことだけを目指しひたすら修行に打ち込むが、地上では母親が寂しそうな眼差しでシモンを見つめている。上を見る母親と同様に、シモンは下を見ずに天を見続ける。肉親でさえもシモンの眼中には入らない。自身の信仰を追い求めるあまり、その他すべてをないがしろにしてしまうシモンの姿は、修行者としては立派だが、生身の人間としてはこれ以上哀しく冷たい存在はない。
一貫したシモンの姿を通じて、過度な信仰心の無意味さ、宗教のみに人生の意義を見出すことの虚しさが示されていく。

そして、砂漠を棺桶が走るという「これぞシュール」な映像トリックには思わず感動してしまうし、何より、クライマックスの“場面の大転換”の発想はもはや天才の領域(というか天才だった)。目から鱗とはまさにこのこと。張りつめた空気の中でシモンの孤独な信仰の日々が描かれていたはずが、突然、時代も“ノリ”も全く違う別世界にトリップしていく衝撃。“見下(くだ)していた”はずの地上世界(シモンにとっての悪魔の世界)が、実は世界のスタンダードであったという皮肉と、それを静かに受け入れ始めるシモンの微妙な表情が印象的だ。

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

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