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天国の口、終りの楽園。 (2001)

Y TU MAMA TAMBIEN/AND YOUR MOTHER TOO

監督
アルフォンソ・キュアロン
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3.93 / 評価:179件

メキシコ風哀愁は熱湯の後にいきなり冷却水

  • yab***** さん
  • 2019年3月2日 23時00分
  • 閲覧数 458
  • 役立ち度 0
    • 総合評価
    • ★★★★★

 実は哀しい作品である。ラストでそれがはじめて明らかにされる。高校生最後のひと夏の性の爆発。人妻ルイサは、浮気をしている夫が許せず、若い二人の躍動感を求める。永遠に続くのではないかと思われる二人の生命力を羨む。ルイサと若いフリオとテノッチの楽園探しの旅。ひと夏のほんの一瞬の旅だ。
 
 先日新聞記事でたまたま見た山口瞳の言葉。
 ”人生は短い。あっというまに過ぎてゆく。しかし、いま目の前にいる電車にどうしても乗らなければならないというほどには短くない”。

 一瞬の夏といえども、電車にどうしても乗らなければならないというほどには短くない。思い出にするには程好い長さなのである。その一瞬の夏にルイサの思惑があり、フリオとテノッチの思惑がある。その思惑はそれぞれ違う。なぜなら、彼らにはそれぞれ人には言えない”秘密”を持っているからである。その”秘密”を胸に秘めながら表面的にはバカぶっている。ヤクを吸ってラリッてノータリンのふりをしている。各々が絶対的な孤独を怖れている。孤立する間を与えまいと必死にはしゃいでいる。

 再びラストのシーン。高校を卒業してフリオとテノッチは会わなくなってしまった。あんなに馬鹿騒ぎしていつも一緒に悪さをしていた二人だったのに…。喫茶店で久しぶりに再会した二人。お互い大学生になった二人。テノッチは経済、フリオは生物を専攻している。もはや彼らにはあのバカな二人の面影がない。会話もなぜかはずまない。お互い視線を合わせないようにしている。

 それが現実だ。過去をふりかえらないのが若さの特権だ。彼らが前向きな証拠だ。もはや彼らの住む世界は違ってしまっている。ひと夏の想い出も、ルイサの想い出も、もはや二人で共有することはできない。彼らは将来を見据えた人生に方向変換しようとしている。

 メキシコの底抜けに明るい風土に幻惑されつづけた後の、一抹の哀しみ。大人になっていくことのほろ苦さが画面一杯に拡がる。熱湯の後にいきなり冷却水をかけられた感じのメキシコ風哀愁に触れて、僕は戸惑いと開放感が入り乱れた不思議な感覚を味わった。

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