アメリカ時代のU2ドキュメント
- 晴雨堂ミカエル さん
- 2010年3月28日 1時17分
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U2の世代は、60年代に生まれ80年代に青春時代をおくった人が該当するだろう。私は高校生時代に「ニュー・イヤーズ・デイ」を聞いてファンになった。この歌はポーランドの労組「連帯」を当時率いていたワレサ委員長に触発されてつくったという。その社会派姿勢がまた惹かれた。ビートルズのルーツの国アイルランドの出身というのも興味を抱く。(余談1)
しかしビートルズと違ってU2は未だメンバー同士の内輪もめや金銭トラブルで解散という話は聞かない。4人は家族ぐるみの付き合いで結束も固いという。これは不思議な感じだ。
外からは見受けられる印象では、イケメンで我の強そうなボーカルのボノ、職人肌のギター奏者エッジ、マイペースでだらしなさそうなベースのアダム、童顔で純情そうなプレスリーファンのドラムのラリー。ボノがバンドのリーダーで独裁に近い感じで引っ張っているイメージを持つ者もいる。
実際は4人同格の原則で、ギャラも貢献度の多少に関わらず均等分配、またバンドの創始者は一番歳が若そうなドラムスのラリーであり、初期の頃は彼がリーダーとしてバンドを引っ張ってきた。現在も他の3人から頼りにされている。リーダー的なイメージのあるボノはあくまでグループのフロントマン(窓口)という。
もしU2が並の売れっ子バンドなら、リードボーカルのボノが脱退してソロデビューやらムービースターやら、社会派を意識して政界進出などを行うこともあり得たかもしれない。が、メンバー4人は個々のジャンルで活躍しながらも、音楽のスタイルを変えながらも、一貫して社会派「U2」であることを続ける。
さて、U2は1980年頃のレコードデビュー以来、前述したバンドの基本原則こそ変えていないが今日に至るまで音楽のスタイルやファッションスタイルについては大きく変えている。
反骨の欧州の少年といった感じの20歳前後、すっかりワイルドな大人といった感じのアメリカン調の20代後半、シンセポップの前衛の30代、40代は原点回帰か。本作はアメリカ時代にあたる。メンバーはそろそろ30歳を目前に控えた歳頃。
87年の全米横断ツアーのドキュメント構成で、アメリカ各地で展開されるコンサートを追いながら、U2各メンバーのインタビューなどを織り交ぜている。4人はインタビューでほぼイメージ通りの発言をしているのが特徴。メンフィスでプレスリーの存在を肌で感じて感無量のラリー。アフリカ系ミュージシャンから「パワフルな歌じゃないか」と褒められてはにかむボノ。ロックは政治的主張をすべきでないとの批判にアダムは「馬鹿げたこと」と一蹴。
そしてコンサート中、「サンディ・ブラディ・サンディ」の間奏でボノは「ファック!レボリューション!」とぶちあげ、IRA批判を並べる。
汗だくになりながら雄叫びをあげる反骨青年の姿が延々つづく。初期の名曲が収められており、昔からのU2ファンには懐かしい作品であり、当時の生々しいU2の躍動感に共鳴できる仕上がりになっている。
(余談1)ビートルズの4人はイングランド出身だがルーツはアイルランド。リンゴ以外はアイリッシュ移民の子供だったと思う。リバプールの対岸にはアイルランドの首都ダブリンがある。
ビートルズという現象を日本の国内事情に例えてみれば、大阪出身の在日コリアンのバンドが世界的ヒットを飛ばす、そんな感じになるだろう。
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