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堕ちた天使 (1945)

FALLEN ANGEL

監督
オットー・プレミンジャー
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  • みたログ 6

5.00 / 評価:4件

堕天使サタンの官能と懼れ間の逡巡の物語

  • 真木森 さん
  • 2014年6月22日 3時03分
  • 閲覧数 590
  • 役立ち度 2
    • 総合評価
    • ★★★★★

「ええっ、『堕ちた天使』? それってJ.ガイルスバンドの…?」っていうのが初動インプレッション。古いDVD収録映像を整理して発掘した、WOWOWフィルム・ノワール特集「美女と犯罪」の中の一つでした。これが名作なんです。それも当然で、何とO.プレミンジャー監督がデビュー作『ローラ殺人事件』の翌年に撮ったものなんですね。あの映画で見事な存在感を示したD.アンドリュースがまたしても「静かに色に狂いつつも静かに難事を乗り切り解決していく」という美味しい役を演じます。それ以外にもあの映画でメイドをやっていた女性も顔を出しますし、何となく本作の登場人物達は『ローラ殺人事件』に出てきた名キャラクター達のパラレルワールドにも見えますね。それからインチキ心霊術博士はジョン・キャラダインがやっていて、ほとんど出オチなんですが余りの存在の説得力に脱帽。都落ちしてきた刑事を演じたチャールズ・ビッグフォードってどこかで見たことがあったのですが、そうか、『スタア誕生』でプロデューサー役をやっていた人か。この方も舞台畑出のようで、渋い存在感でうなりました。そして舞台出身と言えば本来のヒロインであるアリス・フェイです。リンダ・ダーネルを抑えてビリングは1番目だし「誰だ?」って思ったのですが、彼女のフィルモグラフィを見ればそれは文句なし。彼女の出演作は『シカゴ』しか見たことがないですが元ジーグフェルト・ガールズだけあって抜群の体技。何でも彼女は本作の出演を期に一線を退いたのだとか。役柄上の設定と重なる部分もあって感慨深いですね。ただし評論家P.ケイルは「教会でオルガンなんか弾いて全く不釣り合いな役だ」って酷評していたとか。そりゃそうだろうな、今でいえばS.スタローンが恋愛ドラマに出てきて「知的な叔父様」を演じているようなものですから。
でもね、DVD発売なった本作もリンダ・ダーネルを前面に押し出したパッケージの売り出しになっているようですが、やっぱり本作はアリス・フェイありきの作品なんですよ。スタントンは前振りなく随分簡単にステラの魅惑の虜になりますが、ジューンも一目で彼のことを気に入ってしまったのは降霊術云々で姉を押し切っているとこからも明らか。これは『ローラ殺人事件』でローラとマークが実は似たもの同士であることと同期です。原題“Fallen Angel”とは堕天使ルシファーのことを指しますが、「真の愛」のみが彼を救える。それは彼女自身をも照射している。「姉の如く男性不信の塊になりかねなかった魂と肉体をあなたは解放してくれた。失敗に終わるかも知れないが私は恐れない。なぜならあなたを愛したから」。彼女も「真の愛」を欲し、そしてそのためにスタントンに「真の愛」を捧げる。もはやこれはノワールではありません。直球勝負の純愛映画です。心を開きあった二人が語り合うホテルの一夜は本当に素晴らしいシークェンスに満ちています。A.フェイは演技者としても一流だったのです。
 思うにこの映画に出てくる人達はこの「真の愛」を求めて身悶えしている人物ばかりだと言えましょう。夜のダイナーに集まる人達。そしてステラ自身も変に挑発的な色気を発散している一方で「きちんとした結婚」を切望している。男にだらしなさそうでいながら、なかなか一線を越えさせようとはしない。姉クララも完全無比の「鉄の女」という訳ではなく、過去の経験が頑なにさせているだけで本当は男性の愛に誘われたいと思っている。彼らは皆、辛い経験を重ねているが故に出会った相手に尖った態度を取らざるを得ないのですが、その実相手を信じたくて、相手に身を投げ出す官能と懼れの間で逡巡している。こういう所が何とも言えず名作と感じる部分ですね。私もそういう人間の一人ですし。
 グロテスクなメロドラマじみていた物語が急展開するのは、映画を支配していたかに思えていたステラが唐突に殺されて舞台から退場してからのことです。これが本編2/3過ぎくらいのことで「ええっ!」という大転換。しかしただでさえ見事な語り口だったこの映画の醍醐味はこの後に連打されるのです。手袋をはめて殴打、靴磨きのさなかにジューンが連行されてしまう最高の長回し。決着が付く最後のダイナーでの静かなる闘い。それにスタントンとジューンが一緒のベッドの中にいるシーンがあって、「ヘイズコードでは禁止されている描写じゃないの?」とか。プレミンジャー監督は従来のハリウッドでは描き得なかったシーン、設定を敢えて押し切って演出することでは有名でしたが、本作にも端々からそれが感じられますね。こんな名作を見逃す手はありません。かつての映画好きが見ること適わなかったこういう映画が簡単に見ることが出来とは良い時代になったものです。
〈追伸〉この時代にすでにパンダのぬいぐるみがあったんですね。米国ではいつから流布したんだろう。ちょっと調べてみるか。

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