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フレイルティー/妄執

fkx********

4.0

ふと目覚めると、枕元に…みゃあぁぁっ!

いろんな事で悩んでいると、マリア様が降臨されて、そんな私におっしゃった。 「なるに任せなさい」 一度でいいから、夢枕にマリア様が立ってほしいものだ。 いや、それ以上に、夢枕にあの優しかった父や母、そして祖母や兄が立ってくれて、微笑みながら頭を撫でてほしい。 それだけで、溜まりに溜まった精神的な疲れや、孤独感や、漠然と抱いてきた不安から、一瞬間で解き放たれるような気がする。 たまぁに、枕元や胸の上に茶猫のみいちゃんが座っていて目覚めることがあるけれど、彼を抱きしめると、その柔らかさと温かさと優しさで癒されはするけれど。 でも、一度でいいから、逝ってしまった優しき人たちに、この世で再会したい…。 そんな『ツナグ』みたいな愚にもつかないけれど儚い一縷の望みを抱き続けながらも、いまだに実現できずにいる私にとって、この映画に登場する父親のような体験は、或る意味、羨ましい限りである。 しかも、一度ならず、二度、三度と彼は神の使いである天使…たぶん、ガブリエル?いや、ミカエルかな…に出逢い、その都度、ほぼ明確にあからさまな啓示を伝えられ、『マイティ・ソー』のハンマーよりも強力っぽい“オックス(斧)”とか、悪魔を抵抗なく捕縛できる“グローブ”なんていう“神の武器”まで与えられるなんて、かの『ジャンヌ・ダルク』や『第七の予言』なんぞもブッ飛ぶような“奇跡”である。 前半の展開では「この親父、何がきっかけでおかしくなったか…」と思いながら見ていたが、そういった“きっかけ”が全く描かれていないところや、妙に親父の“対面の体験”がリアルに描かれていること、そして、断食する事でトランス状態に陥り、神と対話する息子の意味ありげなシーンを見るにつけ、そういった見方が間違っている事に気付き、そして、その思いは、ラスト近くのモニター画面のシーン、そしてFBI捜査官と若い保安官との出逢いのシーンで確信になる。 考えてみれば、神が与え賜うた試練とか、神の意思に反した代償とか、神の導かれた必然とかを、隠れた伏線としてサラリと描かれているのも、気付いてみれば、脚本段階で本当によく練られた作品なのだと感心してしまう。 さて、この映画は、犯人の独白から始まるオムニバスで展開していくが、主人公を標準的な扱いから微妙にずらした形で脇に置いてストーリィ・テリングしていく手法は、少々反則気味だが斬新かつ秀逸であると思う。 標準的なサスペンスとかホラーに有りがちな、深夜の土砂降りの雨の車中といった舞台を中心に進行していくところも、見る者に一種の安心感を与え、これから起こるであろうイベントの観客なりの予想に根拠のない自信を持たせる役目を果たしており、ラストに待っている、たたみかけるようなどんでん返しの連続によって、見る者に与えるショックを倍加させる事に成功している。 いろいろ張られた伏線や、画面には敢えて出さずに主人公達の会話のみで見る者に情景を納得させる巧みな演出も、注目に値すると思う。 小屋の中での殺戮シーンでは、顔をそむける兄とは対照的に、被害者の身体から切断されて落ちる物を恐怖の顔と共に視線で追っている弟の迫真の演技も素晴らしい。 こういった映画を見慣れてしまった私みたいな連中からすると、ラストのオチもどんでん返しも映画の終盤までには殆んど見当がついていて意外性は少ないものの、オーソドックスなショッカーとしては、充分に物語の展開が楽しめる、質の高い映画だと思う。

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