ここから本文です

HERO (2002)

HERO/英雄

監督
チャン・イーモウ
  • みたいムービー 85
  • みたログ 3,187

3.69 / 評価:512件

感情を表す風の演出も良い

  • TとM さん
  • 2020年5月12日 22時57分
  • 閲覧数 718
  • 役立ち度 5
    • 総合評価
    • ★★★★★

初めて観たのはもう10年以上前になる。アジア映画ベスト20には確実に入るお気に入りだ。
その色彩の美しさ、ストーリー構成の妙、中華アクションの真髄、どれも最高レベルの衝撃を受けた。

あれほどわかりやすく赤・青・白・黒に別れた物語構成を、これっぽっちも理解してないヤツに出会い、違った意味での衝撃を受けて仰け反ったのも良い(?)思い出だ。

物語の構成は、剣の極意に似ている。
激情のままに剣をふるい、復讐を知らしめんとする赤のエピソード。
飛雪のメイクからして刺々しく、セリフの言い方一つとっても荒々しい。痴情のもつれから残剣を手にかけた飛雪を追い、如月が挑みかかるシーンの動と静、剣から落ちる血を吸ったように赤く染まる落ち葉の幻想的な美しさは格別だ。

意思と力を一体化させ、大きな目的を果たそうとする青のエピソード。
無名から示された暗殺案に同意し、一騎討ちで落命した飛雪を弔う無名と残剣の手合わせのシーンは、秦王の想像である。
いくら精神の中で行われているとはいえ、常人離れし過ぎだが、秦王の考える剣を極めし者とは、それくらい当然なのだろう。

そして終には私怨を手放し、大きな心で運命を受け入れる白のエピソード。
書の道を通して剣の真髄を極めつつあった残剣は、私怨に任せて秦王を討つことを良しとしなかった。
剣とは民を救うためのものであり、長引く混乱から民を救うには中華を統一させることこそが誠である、との考えに至ったのである。
手も心も剣を手放し、飛雪の剣を受け入れる残剣は剣の境地を見せることで、飛雪の心に巣食う復讐という邪な感情をも救おうとするのだ。
そう、愛しあう二人は、本当は飛雪の故郷で共に生きていきたかったのだから。

そして黒、無名と秦王が向かい合う語らいの場面は、剣の字に込められた剣士たちの心を読み解き、その志を受け取って犠牲を受け入れるエピソードである。
ここに至って秦王は、残剣こそ己と並ぶ大人物であり、その身は自分を狙う暗殺者であるものの、志を理解してくれる唯一の友であることに気づくのである。
側近すらも意を解さず、暴君と蔑まれ、孤独な覇道を行く秦王は、真の知己を得たことを喜び、今果てても悔いはない、と無名に背を向ける。
その姿に無名もまた、中華統一に最も近い秦王の思いを認め、十年の歳月を費やした奥義を使うこと無く去っていく。

秦王の命を狙う者は死罪である。その原則を無視すれば、今後もまた暗殺を企てる者が現れ、世の中は混迷から脱け出せない。
「天下」の為、その覇道に身を捧げた者を、秦王は裏切れないのである。二人目の知己を屠ることでしか、その道は続かない。
物語の幕開けと幕引きが黒なのは、友との永遠の別れを意味する。葬送の黒だ。
ストーリーの最初から、決着は示唆されているのである。

タイトルの「英雄」とは、「常人には成せない偉業を達成する者」という意味がある。
国を、愛を、友を犠牲に「天下」を平らかにする英雄たちの物語は、シンプルでありながら様式美の次元まで高められ、感情に訴えかける。
10年経っても大好きな映画だ。

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

イメージワード

  • 未登録
このレビューは役に立ちましたか?
利用規約に違反している投稿を見つけたら、次のボタンから報告できます。 違反報告
本文はここま>
でです このページの先頭へ