作品レビュー(1件)
- cyborg_she_loves
2.0点
ちょっと腕の立つ高校生なら、これと同じ映画を10万円以内の予算で作って文化祭で上映することは、可能だと思います。 それぐらい、この映画の安っぽさは、群を抜いています。 登場人物は4人だけ。うち3人は高校生役。だから文化祭の自主製作映画の雰囲気を感じてしまうんですが、うち2人が元アイドルの桜木睦子さんと、若き日の玉木宏さんというところが、素人映画との違いといえば違いです。 ただし玉木宏さん、私は売れてからの最近の映画やドラマでも時々感じるんですが、台詞の滑舌が悪い。演技ははっきり言って、ヘタです。 ロケ地は、どっかの町中の公園と、ちょっと深い雑木林と、なんかの施設の廃屋の、3箇所だけ。 という安っぽさなんですが、それを発想の斬新さで補おうとしている点は、ある程度は評価していいと思うんです。 分類すれば「ホラー」に入る映画でしょうが。 何かに襲われる恐怖感を演出したのではなく、自分が生きているのか、死んでいるのか、わからなくなる感覚を映像化しようとしたもの、と言いましょうか。 それこそ高校生ぐらいの時期に、こういう感覚に襲われて、ちょっとゾッとした経験がある人って、けっこういるんじゃないかな。それで、死ぬってどういうことだろう、とあれこれ考えて、余計に気味が悪くなる。 そういう感覚を映像化することに、「成功している」とはお世辞にも言えませんが(何しろ上記の安っぽさなので)、わかる人にとっては、「やろうとしていることはよくわかる」という印象は、残すんじゃないでしょうか。 冒頭、ヒロインのミサキ(桜木睦子さん)が廃墟で自殺を企てるのを監視カメラが見てる、というシーンがひとしきりありますが、これは回想シーンであって、後半でまったく同じシーンが繰り返されます。 本体のストーリーは、ミサキとマイ(柳沢真理亜さんという人、詳細不明)が親友で、そのマイがヒグラシ先輩(玉木宏さん)と恋人同士で、でも3人はいつも一緒に遊んでて、というシーンから始まります。 そのマイがある時、突如失踪する。ミサキと先輩はマイを探して、ある深い森にたどりつく(富士の樹海あたりをイメージさせようとしているようですが、実際に映ってるのは綺麗な雑木林です)。 そこに、ある廃墟がある。入っていくと、2人はある若い美女につかまってしまうんですが、彼女はじつはマッドサイエンティストで、霊を実体化する「ゴーストシステム」なる装置を発明したのだという(というとものすごい機械を想像しますが、実際に映ってるのはただの換気扇です笑)。 で、いわく、マイはじつはもう死んでいるのだが、ゴーストシステムによって幽霊になって、ミサキのところに現われたのだという。 2人は廃墟を出て逃げようとするが、いくら逃げても森から出られない。どうすればいいか聞き出すために、ミサキは再び女性科学者のもとへ戻ってきたのだが、…… てな感じで話は進みますが。 はっきり言って、演技は全員が高校生の映画部員なみ。ストーリーの進行は遅いし派手な出来事は何も起こらないので眠くなるのは確実。 ヘタだなー、高校生かよお前ら、と思わず言いたくなるんですが。 しかし私なんかは、まさにその高校生的なところのゆえに、この幼稚さを笑って許してあげたくなるのも、事実ではあります。 なぜなら、映画のあちこちでミサキや女性科学者が何度も口にする問題。 生きているってどういうことかか、死ぬってどういうことか、という問題。 そういう問題に考えふけっていた高校生ぐらいの頃の自分が、なんとなく思い出されて懐かしくなるからです。 「いい」映画とはお世辞にも言えない。 「好きな」映画でも決してない。 だけど、完全に忘れてしまえる映画でもない。 なんか、そんな感じ。
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