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パンチドランク・ラブ

パンチドランク・ラブ

PUNCH-DRUNK LOVE

95

一人旅

4.0

キレて貯めて恋をして

第55回カンヌ国際映画祭監督賞。 ポール・トーマス・アンダーソン監督作。 ロサンゼルスを舞台に、キレやすいセールスマンの恋の行方を描いたラブストーリー。 『ブギーナイツ』(1997)『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』(2007)『インヒアレント・ヴァイス』(2014)のポール・トーマス・アンダーソン監督による異色のラブストーリーで、トイレ詰まり用のラバーカップ(通称スッポン)を販売する青年バリーと彼の姉の同僚リナの恋の行方を、テレフォン・セックスで男を釣る悪徳業者との攻防をエッセンスに描き出しています。 個人的には傑作『マグノリア』(1999)に次いで衝撃度の大きいアンダーソン作品で、浮遊感の絶えない不可思議な映像と掴み所の薄い作劇、さらにはちぐはぐで不協和な音楽が映画に独特のムードを生み出しています。 キャラクターが強烈な作品でもあります。主演のアダム・サンドラーはコメディ専門俳優の感がありますが、本作では怒りと鬱憤と憂鬱と恋心が複雑に入り混じった主人公の青年を妙演しています。イライラゲージが最大値に達すると突然キレる――姉宅のガラス窓を蹴破る、レストランのトイレを破壊する、職場の壁を本気殴りするetc――と気性の荒さが目を引く一方で、食品会社と航空会社の共同キャンペーンでマイレージを貯めるために対象商品のプリンを大量購入するという珍妙な行動が凄烈です。相手役はエミリー・ワトソン。フォン・トリアーの『奇跡の海』(1996)がデビュー作兼代表作の英国女優ですが、本作では押しが強く主人公にメロメロなヒロインを好演しています。悪徳業者のボス役にはアンダーソン組の名優フィリップ・シーモア・ホフマン。存在感の強烈なまさに怪演です。

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