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シティ・オブ・ゴッド (2002)

CIDADE DE DEUS/CITY OF GOD/GOD'S TOWN

監督
フェルナンド・メイレレス
  • みたいムービー 1,243
  • みたログ 2,625

4.19 / 評価:854件

パンドラの箱…

  • とみいじょん さん
  • 4級
  • 2020年1月20日 0時42分
  • 閲覧数 1142
  • 役立ち度 4
    • 総合評価
    • ★★★★★

何を言えばいいのだろう。この映画を観た後で。
通常の救いを、救いとして感じられない子ども達。
日常がバイオレンスに浸食された街。
あまりの現状に圧倒される。

語り部である主人公が育った街の記録でもあり、
主人公・ブスカぺを含めた兄弟・知人の記録。
主要人物としてだけでも何人かの少年たちが出てくるが、その子なりにどう生き抜いたのかが描かれる。
その他大勢や、そのシーンだけにしか出てこないような子でも、その子なりの性格が感じ取れる。

だからこそ余計に、この状況に唖然とし、戦慄し、憤りを感じ、叱り飛ばしたくなり、行く末を心配してしまう。リトル・ゼにさえも。
そして何もできない自分に言葉を失う。


街を牛耳る3世代の絵巻。
だのに、フォーカスされる人物のほとんどが10代。

底なし沼。
あえて、自ら、その沼に身を投じる者もあれば、
無邪気に、目の前の手本と同じことをする者もいる。
この町の沼から抜け出す道を選んだはずなのに、つかまってしまった者。
あの時、あの場に行かなければ…抜け出したはずなのに、街につかまってしまった者。
”運”なんて言葉では片づけられない…。

連鎖。
そもそもこの街で育つことになってしまったのが、運なのか。
生き残る術。
処世術。
子どもらしい、周りに認められたい、一目置かれたい、仲間として連なりたい。
そんな自然な気持ちがここではこうなる…。

街全体がバイオレンスに飲み込まれていくが、
まっとうな道を選ぶことを望んでいる大人たちもいる。
それでも、その人たちが無力に見えてしまうことに愕然とする。


そんな一大絵巻を、
時にポップに、時にコメディタッチに、それでも基本は淡々とそこに起こっていることを映し出す。
 ことさら、目を覆うような悲惨なシーンがあるわけではない。
 でも、こんなに嬉々として、もしくは、当たり前のように銃を撃つ姿が怖い。
 転げ落ちていくかのような展開が怖い。
 そして、死が日常となった冷めた目をした少年に引き継がれていくさまが怖い。
 
絶妙な立ち位置からブスカぺが、街の様子や、主要メンバーを語っていく。
 ーつるみ、距離をとり、巻き込まれ、失恋をし、食事をし、笑い、喜び、憧れ、馬鹿をし、からかわれ、ばかにされ、迷い、悩み、苦しみ…。
 そんな、私たちも経験するようなありふれた青春の一幕が描かれる。
 そんな日常。かけ離れた日常。どちらもが、彼らにとっては日常なのが、なんともやるせない。

マウント合戦。希望と絶望。夢とあきらめ。パートナーと孤独。恐怖。恐れ。怒り。虚無。…
このバイオレンスに満ちた展開の中で、情感が丁寧に描写されていく。


『トラッシュ』が作りごとに見えてしまう迫力。

パンドラの箱を開けてしまったかのような映画。
 描かれる現状に戦慄しつつも、
 最後に一筋の希望が。



これだけ悲惨で重い話を、悲惨で重いだけで見せない手腕に拍手。
役者もほとんど素人と聞くが、全員役者かと見まごう程。
街で映画の撮影ができるほど、治安が改善したのだと思いたい。

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

イメージワード

  • パニック
  • 不気味
  • 恐怖
  • 絶望的
  • 切ない
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