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スウェプト・アウェイ

jac********

4.0

何故ラジー賞なの?

本家の1974年『流されて』は高校生の時に観て、生涯忘れられない程の衝撃を与えられた映画。 ヒロインを演じたマリアンジェラ・メラートは今でも生涯のベスト女優だし、彼女の話すイタリア語が耳に心地良くて、イタリア語こそ世界で一番美しい言語なのではないかと本気で思った。 お陰で高校生の時には行ってみたい外国はいつもイタリアと言っていた。(イタめしブームなど来る前の話。情けない事に未だにイタリアに行った事は無い。) そんな『流されて』ファンの私が観て、『スウェプト・アウェイ』はラジー賞の最悪リメイク賞を獲る程酷い映画とは思えなかった。 基本的なストーリーは変わっていない。 『流されて』ではイタリア国内の南北問題というのが浮き彫りになっていた。 南部は温暖で海がある為に漁師や農業など第一次産業が中心で裕福ではないのに比べて、北部は工業地帯で金持ちが多い。だから、マリアンジェラ・メラート演じるマダムは北部の富豪夫人で漁師は南部の人だった。 マドンナはイタリア語は喋れないだろうから、アメリカ人という設定に変わっているくらいだ。 この映画のテーマの1つは「地位逆転」。 社会での地位関係が無人島では逆転する。 それまで罵詈雑言を浴びせてきた富豪マダムは自分の食料を調達することもできない。 逞しい漁師は食料を分けてくれと言ってきたマダムを調教する。 といっても昨日亡くなられた団鬼六さんの書く世界程どぎつくは無い。でも根底は同じ。 原始の力関係に戻ったのだ。 だが、不思議な事が起こる。 当初は屈辱に耐えながらだったマダムが文明社会では見せなかったような笑顔を見せた。 マダムは自分でも気が付かなかったが調教を受け入れたのだ。 (調教という言葉は悪いが)何も文句を言わない旦那や周りの男達に毒されたいたが、本当は男に強く出て欲しかったのだ。 そして、この映画のラストの切ない余韻。 それは「男はロマンチスト、女は現実主義者」。これに尽きるだろう。 マダムは文明社会に帰ったら、どういうことになるか見えていた。 だから、船から身を隠そうとした。 漁師は文明社会に帰っても、続けていけると思っていた。 甘い。 ロマンチストの甘過ぎる観測だ。 そのあたり、『スウェプト・アウェイ』もちゃんと描けていた。 では何故ラジー賞なのか? マドンナ自体が嫌われているという理由を除けば、思い当たる節は2つ。 1つは、無人島でマダムに踊れ!歌え!と命令して、漁師が妄想するシーン。 マドンナが歌手だから、このシーンを挿入したかったのかもしれないが、この歌と踊りの妄想シーンはあまりこの物語に似合わない感じがした。 2つ目はマドンナの年齢。 『流されて』の時のマリアンジェラ・メラートは33歳だった。 『スウェプト・アウェイ』の時のマドンナは44歳である。 ジムで鍛えられた肢体は実に美しい。 マリアンジェラより美しいかも。 しかし、アップで目尻の皺がかなり目立ち、少々無理があるように感じた。

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