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欲望の翼

欲望の翼

阿飛正傅/DAYS OF BEING WILD

97

khm********

4.0

ネタバレ南へと越境する欲望

92年の封切以来久し振りに観た。当時の日本での消費のされ方は、マガジンハウス的というか、まあそういう気配のある映画だったが、歴史的傑作でもある。C・ドイルによる、人物に肉薄する官能的な映像、人気俳優が結集―とよく言われるが実力充分の抑制された演技。僕は彼らの何人かと同世代だが、彼らは世界的に世代のトップ俳優であった。街は描かず人物のみを描く演出。僕たちの国はアジア随一の先進国気取りで外来文化を閉鎖社会に育んだが、彼ら香港人は中華の伝統と植民地化の歴史を背景に一つところに留まらない、どこへでも越境して流れて行く無常感を作品にした。1960年の空気。日本映画はいつからか過去の時代再現は「なんちゃって」レベルが通常になってしまっている。そして僕はこの映画から1960年の空気と共に日活映画も感じる。裕次郎・旭・錠。思えば日活映画こそは、越境―どこかへ去ったり、どこからか帰って来たり―を当然のように描いていた。日活的な要素は現代日本映画からは失われているが、これは貴重なものではなかったか。

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