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ラスト・シューティスト (1976)

THE SHOOTIST

監督
ドン・シーゲル
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4.08 / 評価:49件

さらば、“デューク”

  • カナボン さん
  • 2010年9月29日 23時36分
  • 閲覧数 648
  • 役立ち度 17
    • 総合評価
    • ★★★★★

何となく日々を過ごしている、殆どの方に当てはまることでしょう。もしガンを宣告され、あと数日しか生きられないと知ったら、皆さんはどのように残りの人生を過ごすでしょうか?

今日のお題目は「ラスト・シューティスト」です。

ハリウッドの星、“デューク”の愛称で親しまれた名優ジョン・ウェイン。1979年6月11日、154本もの作品を残し全身ガンで亡くなった彼の最後の作品。言うまでもなくこの映画で彼が演じるJ・B・ブックスは、正真正銘ジョン・ウェインという稀代の名優の姿そのものです。

監督ドン・シーゲルのこれほどの名作、何と今日までのレビュー数わずか8件!私より若い世代の映画ファンの皆さんはもしかしたらジョン・ウェインの名前すらご存じないのかも知れませんね。西部劇なんて古臭い、そんな感じなのかな。新しい作品も勿論素晴らしいものがたくさんあります。でもそんな最新の傑作の誕生の影にはそれまで先代の偉人たちが残して来た数々の名作があるからこそだということをわかって欲しい。紛れもなく“デューク”はそんな偉人の一人なのです。

本作はガンで余命があまりないと親友の医師に宣告された老ガンマンの一週間の物語。オープニングでウェイン自身の「リオ・ブラボー」や「エル・ドラド」といった代表作が次々とモノクロで映し出される。勿論これはブックスの若かりし頃の設定としてです。

「俺は不正や侮辱を好まん、干渉も嫌う。俺は掟を守るが他人にも守らせる。」
これがブックスの人生哲学。でもこれは同時にウェイン自身の掟でもあるように思われます。

彼は本物の男でした。ハリウッド西部劇において、ジョン・ウェインが果たした役割はあまりに大きい。徹底して悪を憎んだその姿勢、当時の厳しい映像規制により、撃たれて血が飛び散るような場面はご法度、でも“デューク”の早撃ちで悪玉が吹っ飛ぶシーン、誰もが歓声を上げていた。

常に命を狙い、狙われ続けたブックス。彼はその人生の幕引きにカーソンシティの町に巣食う3人のダニとの決闘を選ぶ。それまでの一週間、彼が一体何を考え、何を感じて来たか、下宿の老婦人との情感溢れる馬車でのデートシーンなどで詩情豊かに謳い上げる。

やみくもに走り抜けて来た人生、こんなに風景って綺麗なものだったのか。人生が終わりに近づいた時に漸く気づく。相手役の大女優ローレン・バコールがしっかりとこの名シーンをアシストしている。

ガンのために残り少ない人生をどのように過ごすか、本作は言うまでもなく黒澤明監督の名作「生きる」を彷彿とさせます。本作のジョン・ウェイン、志村喬さんの名演と遜色ない。ウェインは確かに154本もの映画に出演している名優ではありますが、実のところ演技そのものに対してはそれほど評価はされていませんでした。デビュー後40年目にして、「勇気ある追跡」で初めて獲得したオスカー。でも本作の演技はこの時の隻眼のガンマン役よりもずっと素晴らしい。

“デューク”自身がブックスという役に自らの人生を重ね合わせていたことは間違いありません。この最後の作品を撮り終えてからウェインは3年後に亡くなります。本作の撮影中はかなり辛かったことでしょう。でもウェインの表情からはこれっぽっちも後悔の念は感じられない。そこには誇り高き男の横顔が存在するのみ。

自分の名前を金儲けのタネにしようとしたり、倒して名を上げようとする卑屈な人間たち。実際“デューク”ほどの名優ともなれば金目当ての人間のクズどもが多数まとわりついて来たことでしょう。でもウェインは決して人に媚びたりはしなかった。そんな彼の姿勢がブックスに乗り移っている。

ラストの酒場での決闘シーン、これぞまさに西部劇。「死亡遊戯」でブルース・リーを苦しめたヒュー・オブライエンや、卑屈な殺し屋役が似合うリチャード・ブーンがブックスに襲い掛かる。被弾して尚も闘いを投げ出さない黄昏時の老ガンマンの姿には自然と涙が溢れてくる。

“デューク”と親友であるジェームズ・スチュアートも最高。そして本作のキーパーソン、ギロム役に若かりし頃のロン・ハワード。ゆくゆくオスカー監督ともなる彼の目に、最後の一瞬まで輝き続けたジョン・ウェインの姿、後の彼の成功に無関係だとは思えません。

恥ずかしい話ですが、今まで700本以上もの作品をレビューしていながら、ジョン・ウェインの出演作を書いていなかったことに今気づきました。西部劇の面白さだけなら「駅馬車」や「リオ・ブラボー」の方が上です。でも“デューク”の作品の中ではダントツでこの映画が好き。素のままのジョン・ウェインがこの映画の中にはいるからです。

ある意味彼の死と共にハリウッド西部劇は終焉を迎えました。まさに最後の西部劇に相応しい素晴らしい映画です。

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