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美しき諍い女(いさかいめ)

美しき諍い女(いさかいめ)

THE BEAUTIFUL TROUBLEMAKER/LA BELLE NOISEUSE

237

hei********

5.0

238分の芸術!

まず、邦題がたまらなくいい。「諍い女(いさかいめ)」ってなによ?と思うじゃないですか。Yahoo!辞書でも出てきません。映画の中では「けんかっ早い女、口うるさい女」と言ってました。音の響きからして早くもけんか売ってますよね。日本語の美しさを感じます。 それはさておき。この映画は238分、どえらい長さです。このジャック・リヴェット監督は、作品が長いことで有名らしく、究極は12時間40分(『アウト・ワン』Yahoo!映画の監督作品リストにも載ってないや)なんていうのもあります。 4時間のストーリーを60字以内で説明するならば、 かつて妻をモデルに「美しき諍い女」という大作を描こうとして挫折した天才画家が、若く美しい女性と出会い、再び大作に挑む。 というもの。これだけだと実に味気ないですね、やっぱり。 映画の半分以上は、アトリエでの画家とモデルとのやり取りを描いています。画家がデッサンをするノートまたはキャンバスを延々と映すカメラ。真っ白なノートに人物が浮かび上がってくる過程をじいっと観ていると、映画というより、NHKのドキュメンタリー番組を観ているような錯覚を起こしてしまいます。そして忘れた頃にカメラがふっと切り換わり、ポーズをとっている若いモデル、マリアンヌの豊満な肉体が映し出されます。 描かれることによって、自分自身がどんどん解体されていくマリアンヌを演じたエマニュエル・ベアールは見事です。彼女は常々やさくれた役が似合うと思っていましたが、私が観たなかでは、この役が一番素晴らしいのではないかと。 そして忘れてはいけないのが、ジェーン・バーキン演じる妻。序盤こそ、今回の彼女は珍しくおとなしい役じゃん、と思いましたが、やっぱりそんなはずはありませんでした。夫である画家とマリアンヌが次第に心を通わせていく様子を見てわなわな震える彼女は、口調が柔らかいだけに、怖すぎます。 芸術について考えさせられる素晴らしい作品です。 それを思えば、4時間なんて短いくらいです。 いやいや、ほんとに。

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