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美しき諍い女(いさかいめ)

美しき諍い女(いさかいめ)

THE BEAUTIFUL TROUBLEMAKER/LA BELLE NOISEUSE

237

とみいじょん

3.0

創造の時。自己との、魂との対峙

途中で休憩をはさむ映画はインドだけではなかったんだ。 自分の求めるものは何なのか? 否、それは”私”が求めているのか? それとも、何か大いなる力に描かさせられているのか? 歴史を越えて、人の心を揺さぶる芸術について、よく作り手が語る言葉。 そんな瞬間・過程をひたすら紡いだ映画。 画家とモデルがアトリエで対峙する。そこにその妻やその恋人の思惑が絡む。  それだけの筋で、4時間。 キャンパスに色を塗りこめる。それだけなのに、なんともいえない緊張がはらむ。 そんなシーンが繰り返される。  それだけで、4時間。 なのに、なぜか目が離せなくなってくる驚嘆すべき映画。 音楽もほとんど自然音。 鄙びた?自然あふれる村に立つ城。 その納屋を改築したアトリエ。ホテルの部屋。 そんな閉塞的な空間と、突き抜けるような空と森、朴訥とした村の佇まい。 その中で巻き起こる登場人物の心の揺れ動き。 それは、たんなる気分ではなくて、生き方にもぐいぐい迫ってくる。 そんな凝縮された部分と、解放感のバランス・間も見事。  最後に画家の取った行動は、傲慢なのか、称賛を捨てて、モデルや周りの人を守った人間性なのか。  妻が書き足した十字架。それは誰のためなのか?自分の?夫の?マリアンヌの?  そして、封印された”もの”を心に秘めたマリアンヌの変化。児童文学『クローディアの秘密』にも通じるテーマ。   何かを産み出すときの、逡巡と、緊張・高揚を知る人には、その感覚を思い出させてくれる。  内側から溢れ/滾る何か。時に、永遠の時・飛翔・拡がり。と、同時にコントロールを失いかねない危うさ。恐れおののきつつも止まらない”何か”。  その創造性に、最初は利用されるだけの存在でありつつも、しだいにインスパイアしていくモデル。そのオーラがすでに芸術…。  二人の一体感。昇華…。 その傍にいる人々。置いて行かれるやるせなさ。 そして、完成させてしまった時の満足・後悔・空虚…。 芸術論であり、地味なのに濃厚な人間ドラマ。 とはいえ、この長さ。再鑑賞には覚悟がいるし、誰にでもお勧めできる作品ではない。 受け身で鑑賞する人にとっては眠いであろうから駄作となり、 好みがあう人にとっては傑作となる。 P.S.:作品情報で知ったが、 ヒロイン(モデル)は、『ミッションインポッシブル』の初代ヒロイン・クレアを演じた方なのね。 そして画家は、ドヌーブさんの『昼顔』のあの方。

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