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ルシアンの青春 (1973)

LACOMBE LUCIEN

監督
ルイ・マル
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3.82 / 評価:49件

ルイ・マルならではの瑞々しくも残酷な青春

青春映画としてとても魅力的にできている、そして声高ではないが残酷な時代を「二度とあってははならない」自分もまだ子供ではあったけれどその時代の一員であったことを懺悔の思いを込めてこの映画を製作しているように思った。

ルイ・マルはルシアンを批判的には描いていない、未成年は文字通り未成年。
まだ大人ではない、愚かさを整理できない年代だと思う、反抗期のない人間はダメだ、とよく言う、まさにそのやり場のないエネルギーを持て余している。
戦争はよくない、すべての人にとって。
戦争は人の愚かな部分を炙り出す、大きなストレスは人間の残酷な部分を引き出してしまう、未成年ならなおさら、と言いたいところだが、実は立派な大人にとってもそうなのだと思う。
戦争を始めるのは立派な大人なのだから。

フランスの片田舎、自転車を走らせるルシアン、軽快なジャンゴ・ラインハルトの曲が被さりとても魅力的なシーン。
この後パチンコ(投石器)で小鳥を殺したり、うさぎを撲殺したりと青春期独特の意味もなく残虐な一面を描き、また、家庭環境からくる身の置き所のないことなどから、レジスタンスに参加しようとするも年齢から断られ、受け入れられたゲシュタポの手先となり、愚かにも銃を持ち偉くなったような気になる無知で無邪気な17歳が易々と人生の陥穽に堕ちてしまう。
そのあたりの描き方に説得力がある、戦時にはこういう人たちが数限りなくいたのだろう。

ゲシュタポに連れて行かれたユダヤ系フランス人の仕立て屋で彼はその娘フランスに一目ぼれする。
フランスの気持ちはどうなのかはわからない、逆らうことはできなかったのだろうが、少なくとも嫌いではなかったように見えた。
ルシアンにすべてを奪われるフランスの父の人間的魅力が素晴らしく際立っている、「君を憎み切れない」その台詞に人間というものへの深い洞察を感じる。
フランスが弾くベートーヴェンの月光ソナタがこれから先のルシアンと彼らの運命を暗示しているように思う。

彼女を知ったことでルシアンは人間的な気持ちを取り戻していくが、時代は彼の過ちを許してはくれない、当然だろう。
世の中にはどんな理由を付けても許されることと許されないことがある。

冒頭の新鮮な自転車を走らせるシーンは映画ラストフランスと戯れる、今まで見ることがなかったルシアンの笑顔につながっているが、そこに数行の字幕で語られるルシアンの末路が哀しい。
青春の残酷さを描いた秀逸なラストシーンだった。

ルイ・マルは1987年「さよなら子供たち」で似たような映画を撮っていて、高く評価され今も名作と言われている。
それを遡る1974年に撮られた本作もまた名作だと思います。

ルイ・マルのジャズやクラシック使いの音楽の選び方は素晴らしく「さよなら子供たち」のシューベルト、本作でのジャンゴ・ラインハルト&ベートーヴェン、
「鬼火」でのエリック・サティなどどの映画も新鮮さが際立っています。

詳細評価

物語
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