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レニ

レニ

DIE MACHT DER BILDER: LENI RIEFENSTAHL/THE WONDERFUL HORRIBLE LIFE OF LENI RIEFENSTAHL

182

R1

5.0

ネタバレ意志の勝利

「あなたの人生の6日間だけ下さい」 断るつもりだったレニ・リーフェンシュタールに党大会の記録映画を撮ってもらう為にヒトラーが言った口説き文句 ヒトラーの全面的な協力と豊富な制作費で完成した作品は、国内外で高評価を得た記録映画『意志の勝利』 移動ショットを多様して、現在では当たり前のように使われている様々な技法を初めて使った作品だった しかし結果的には悪魔との契約になってしまった 映画『レニ』は1902年生まれで90歳近くになったレニ・リーフェンシュタールのインタビューを中心に当時の貴重な映像を交えながら、激動の時代を生きた彼女の波乱万丈の人生に迫るドキュメント映画 活力があり、表情豊かで、情熱的で、時には感情をむき出しにして90歳にはとても見えない 三時間を超える長編だが時間も忘れて面白く観れた 将来を期待されたダンサーの頃の話から始まり、女優への転身、後にハリウッドに渡り大スターになったマレーネ・ディーリッヒとの確執、初監督作品『青い光』でのヴェネチア国際映画祭で銀獅子賞受賞 どのエピソードもとても楽しく聞ける インタビューも室内だけでなく、撮影ロケ地やスタジオなど思い出の場所の数々を訪れて当時のことを思い出しながら語られる 高い岩山を裸足で軽々とロッククライミングで登る若い頃のレニが素敵 リアル主義だったアーノルド・ファンク監督は、雪山で実際の雪崩を待って巻き込まれるシーンを撮ったりと、今では安全を考えてあり得ないようなことをしていた話など、レニが後に完全主義の芸術家と呼ばれるようになった基礎ではないかと想像できる 初監督作品でも上手くは行かずに尊敬していたアーノルド・ファンク監督に色々と相談していたりと、初めから天才ではなかったエピソードなど面白く聞けた そしてレニの人生で一番の興味深い出来事 ドイツで台頭してきたヒトラーとの出会い レニは語る ヒトラーの第一印象は謙虚な好人物だった しかし強いオーラがあり催眠術で意識をコントロールされそうだと レニにはそのつもりがなくても結果的には多くの人々に悪影響を及ぼしたナチスのプロパガンダ映画を作った人物として、現在でもドイツでは好意的には受け入れられていない 『意志の勝利』はドイツでは上映禁止で、日本でも観れる機会は少ない インタビュアーは「ヒトラーの本当の目的に気づきませんでしたか?」と聞く あの時代は90%の国民がナチスに心酔していた 政治に興味のない私に分かるはずがない 断ることなど不可能だった 反ユダヤ主義も人種論も出てこない『意志の勝利』のメッセージは”平和”だったと レニは戦後はナチス協力者として拘束される 反ユダヤでもナチス党員でもなかったとの判決で自由に しかし世間からはレッテルを貼られて表舞台から消えた 71歳で、年齢制限のあったスキューバダイビングの免許を20歳若く申請して取得 長期に渡り水中の生物を撮影した映画『ワンダー・アンダー・ウォーター』を100歳になった2002年に発表 実に48年振りの監督作品でレニの遺作になった 戦後、重すぎる程の過去を背負ってきたレニ 苦悩や苛立ち 映画の中でも何度となくナチスとの関係や責任問題についてどう思うか質問する レニ自身でも事が大きすぎて、言葉では言い表せないことだと感じられる そしてレニは言う「私の罪は何? 原爆も迫害も無関係です」 5ヶ月間も昼夜休まずに面白い映画にする為に何度も作り直して出来上がった『意志の勝利』 「ここは面白く見せる為、こう工夫したのよ」とフィルムを見ながら目を輝かす90歳のレニ 不幸な時代に生きた一人の偉大な芸術家を描いた素晴らしいドキュメンタリーです ベルリンオリンピックの記録映画『オリンピア』や表舞台にカムバックしたアフリカのヌバ族の写真集のエピソードなどもとても面白いです

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