ベルイマンの演出センスを堪能する
- URYU さん
- 2009年11月20日 17時18分
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- 総合評価
冒頭の風の吹きすさむ映画撮影所に、精神病院に入っていたという老教授が、映画のモチーフを持ってやって来るシーンから不思議な緊張感があり、映画の撮影現場の舞台裏を垣間見させながら進行する構成や、演出家夫婦(ビルイェル・マルムステーン、エーヴァ・ヘニング)のエピソード、婚約者に客を取らされる17歳の娼婦(ドーリス・スヴェードルンド)のエピソードが、巧妙に絡んで悲劇的展開を生むクライマックスまで、目が離せなかった。
この娼婦が、夢の話をするシーンがあるのだが、人間のかたちの木の生い茂った森に迷った彼女の姿をシュールに描いていて、素晴らしく幻想的。
また、手回しの幻灯機で、サイレント・ムービーを見るシーンがあるのだが、この劇中のスラップスティック喜劇がよく出来ており、60年近く経った今見ても瑞々しい。
「地上の地獄」という映画の企画が主軸になって、地上には神など存在せず、地獄が口を開けている…というメッセージが全編を被っている。
ベルイマンがこんな初期に、すでに「神の不在」を暗示させる深刻な人間ドラマを作っていた事に感嘆すると共に、この作品が初期の作品群の中でも、“最も重要だ”とする評論家が多い事にも納得がいった。
詳細評価
イメージワード
- 不思議
- 知的
- 絶望的
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