レビュー一覧に戻る
ローマの休日

ローマの休日

ROMAN HOLIDAY

118

a00********

5.0

彼女は呟く「あの時は本当に楽しかった」と

「心地良い」作品には、めったに巡り逢えないもの。 そんな中、この作品は「心地良い」なんてもんじゃない、 「心を洗い流してくれる」素晴らしい作品です。 オードリー・ヘップバーン。 彼女を超える女優はおそらく永遠に出てこないでしょう。 ジュリアロバーツがいかに似た映画に出演しようが、 キャメロンディアスが携帯片手に可愛く踊ろうが、 失礼ながらオードリーの美しさには足元にも及ばないのです。 彼女の美しさはどう表現したらいいのでしょう。 美しい女性を見た時、どんな男でもいやらしい感情を 覚えてしまうものだけれど、彼女を見た時に感じたのは、 「いやらしい感情」でも、「手に入れたいという欲望」でもなく、 「感動」とか「畏敬の念」とかそういう次元です。 まさに「別格」の、「透きとおるような」美しさ。 けれど、スクリーンでの美しさとは裏腹に、 私生活の方は、2度の離婚など順風満帆 というわけではなかったようです。 スターとして頂点に駆け上がる彼女に、 「気兼ねなく」「遠慮なく」接してくれる人などもはや誰もおらず、 彼女は孤独を感じていたのかもしれないと思うと、 少し切なくなります。 そんな彼女も晩年は、女優としてではなく、 ユニセフの親善大使としての人生を見出し、 アフリカの貧しい子供たちにその身を捧げます。 テレビに映るその姿は、年齢を感じさせないほどの美しさでしたが、 それでも手や顔には多くのシワが刻まれていました。 それを見て、ある心無い日本のお笑い芸人がこう言いました。 「出てこんで良かったのに~、ショックやったわ~」と。 けれど、オードリーは笑顔で語りかけるでしょう。 「心が美しければ、人は輝き続けるの」と。 「ローマの休日」が歴史に残る素晴らしい作品になったワケは単純。 それは彼女が誰よりも「幸せ」そうだったから。 「真実の口」でビックリするシーン、 ギターで秘密警察をぶん殴るシーン。 どれも本当に「幸せ」そうだ。 彼女がバイクで街を滑走するシーンがある。 数年後そのシーンを見て、彼女はこう呟いたそうです。 「あの時は本当に楽しかった」と。 その言葉には、ナチスの虐殺から必死に身を隠した少女時代から、 ユニセフ親善大使になった晩年期までの、 決して楽ではなかった人生に対する、 心からの声だったのかもしれません。 「ローマの休日」での彼女の幸せそうな笑顔は、 ハリウッドという「夢」を手にした「喜び」の表情。 そしてその数十年後、親善大使の頃のしわしわの笑顔は、 ようやく義務から離れ、やりたいことに挑戦できたという、 「自由」を手にした「喜び」の表情。 どちらも輝くほど美しい笑顔だけれど、 束縛から身を解かれ、 やっと自由を手にできた晩年の彼女こそまさに、 「ローマの休日」の「アン女王」その人です。

閲覧数3,024