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ローラーボール (1975)

ROLLERBALL

監督
ノーマン・ジュイソン
  • みたいムービー 8
  • みたログ 149

3.26 / 評価:47件

オリジナルVSリメイク⑩ オリジナル版

  • カナボン さん
  • 2010年6月24日 22時04分
  • 閲覧数 836
  • 役立ち度 13
    • 総合評価
    • ★★★★★

各国が国の威信を懸けて臨む4年に一度の祭典、さあ、いよいよ今晩はデンマーク戦ですね。がんばれ!日本!!
ところで、国の威信など全くどこ吹く風、完全な管理社会が形成された2018年の未来社会を舞台にした恐るべき映画があります。久し振りのこのコーナー、

今日のお題目は「ローラーボール」(1975年版)です。

戦争も犯罪もない未来世界。どこぞのアホ集団がその実現を声高に謳いそうですが、これには大きな落とし穴がある。誰もが最初はこんなユートピアが実現すればいいと思う事でしょう。しかし人類の歴史は戦いと血の歴史。そんな人間の本能を満たすためにとんでもない殺人スポーツが生み出される。
要はどんなに綺麗事を言っても人間は血を見ずにはいられない生き物なのだという、そんな真理を赤裸々に描いた問題作がこの映画なのです。

2018年、世界は「エネルギー、食糧、住居、輸送、娯楽、通信」の6つの大企業体で形成されていた。表向きは平和な世界、しかし人々は人間の持つ闘争心のはけ口を殺人ゲーム「ローラーボール」に向けていた。目の前で重さ10?の鉄球を巡り、殺し合う選手たち、その様子を嬉々として眺める。かつての古代ローマ時代のコロシアムの様に。

主人公ジョナサンはローラーボール界のスーパースター。観客は彼のカッコ良さに憧れる。企業としてもこのスターには豪華な邸宅など、贅沢三昧をさせている。しかし彼の中に全て管理されていることが本当に人間なのかという疑問が湧いてくる。

その名の通り、この未来は徹底的な管理社会。ちょっとネタばれになりますが、恋愛さえも例外ではないのです。奇しくもそんな社会に疑問を持った人間が未来社会における唯一の娯楽、ローラーボールのヒーローと来ている。このままではこの社会が崩壊しかねない。“管理者”たちは危機感を募らせ、ジョナサンに引退勧告を仕向ける。

20世紀の映画には、シナリオに重みがありました。この作品も単純なバイオレンス物などでは決してありません。何と言っても監督が「夜の大捜査線」や「屋根の上のバイオリン弾き」の名匠ノーマン・ジュイソンですよ。この映画に込められた監督のメッセージがありありと感じられる。

また、管理社会において人間性を喪失した人々の描写もじっくりと描かれています。いわゆるこの時代のセレブたち。嬉々として殺し合いを見ていたり、銃を撃って大木を燃やしたりしている。しかしその目つきには微塵も人間らしさが感じられないのです。まるでロボットのような印象を受ける。

こんな混沌とした未来世界の描き方一つを取っても大変良く出来ている映画なのですが、やはり見せ場は殺人ゲームの試合。ジョナサン率いるヒューストンチームは、この作品でマドリッド、東京、そしてニューヨークの3チームと闘うことになる。
緒戦のマドリッド戦、これは軽ーくジャブという感じ。しかし自分たちに刃向うジョナサンをゲーム中に抹殺せよと管理者たちが画策する東京戦からかなりバイオレンス度がアップしてくる。親友ムーンパイが3人の東京チームに植物人間とされてしまってからは、ガラッと作品の雰囲気が変わってくるのです。目には目を、復讐の為に東京チームを再起不能にしていくジョナサン。最早彼は管理された人間ではない。自分の意志で怒りに燃える獣となっていく。

ジョナサンを演じるジェームズ・カーン。今の若い方はご存じないかも知れませんが、昔の彼はアクションスターだったのですよ。ジョナサンを先頭に縦隊を組んでトラックを周回するヒューストンのカッコ良さ!それに比べて妙な空手のポーズの東京チームには同じ日本人ながら大爆笑!

共演は管理者バーソロミューに名優ジョン・ハウスマン。既に彼自身人間らしさを喪失していて、それに気づいていないという難しい役柄を演じ切る貫録は流石。そして唯一2度のボンドガールとして有名なモード・アダムスがジョナサンの別れた妻に扮しています。

最終戦のニューヨーク戦などは最早、殺し合い以外何物でもない。罰則なし、交代なし、トラックはまさしく戦場なのです。鋼鉄のフックがズラッと並んだグローブで殴りつける。バイクで転倒しているプレーヤーの足を掴んで引きずり回し、コンクリートのフェンスに頭部を叩きつける。そこここで炎上するバイクと転がる死体。静まり返ったスタジアム、既にトラック内に立つものはジョナサン一人。やがて次第に湧きおこるジョナサンコール、しかしその大歓声の中、ジョナサンの心は恐ろしいほど空虚そのもの。バッハの「トッカータとフーガ」のメロディがこの上なく作品に合っている。

私は当然暴力肯定者ではありません。争いのない平和な世界がくればいいと本気で思います。そうであってもこんな未来は願い下げ。

恐るべき近未来世界を描いた70年代最高の一本です。

詳細評価

物語
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音楽

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