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ロレンツォのオイル/命の詩

dpa********

5.0

ネタバレ私たちは諦めずに難病と戦い続ける

 これは1983年頃、わずか26年ほど前の話。副腎白質ジストロフィー(ALD)という10年前に発見された不治の病に冒された息子を救うため、医学知識のない両親が、医学文献を読み、研究者を集め、国際シンポジウムを主催し、さらに、自力で病気のメカニズムを解明し、食事療法のための特定のオイルの開発を進め、わずか2年数か月で治療法を見つけ、息子の命を救い、さらに多くの子供たちの命を救ったという、奇跡のような実話である。  テーマは「人生は戦いだ。息子が病気と闘っているがきり、私たちは諦めずに戦い続ける」かな。 【あらすじ】はザック・オマリー・グリーンバーグのレビューに掲載します。 【トピックス】 その一 キャスト ●父・オーグスト・オドーネを演じるニック・ノルティ 息子の病名を知らされ、図書館で症例を調べた。これから息子の身に起こるであろう四肢の麻痺や失明などの症状の数々、そして、2年以内に死亡するという予告。あまりに残酷な事実にショックを受けて、ひとり暗い階段で泣き崩れる父親の様子に一気に物語に引きこまれる。  なんとしても治療法を見つけようと、何日も昼夜の関係なく、医学文献を読みあさり、憔悴していく。彼の夢の中に脂肪酸の模型を手にした息子ロレンツォが登場して病気のメカニズムがひらめき小躍りして喜ぶシーン、さらに、ふたつのオイルを混ぜて投与して治療し、遂に血中の脂肪酸が正常値になったときの喜びの演技は本当に気持ちいい。 ●母・ミケーラを演じるスーザン・サランドン 病院でロレンツォが不治の病であると知らされ、夫とともに病院の廊下を涙ぐみ倒れそうに歩きながら、長い廊下の端にいる息子に近づいていく、息子が振り返る前に笑顔にならなくてはと、強張った笑顔を作り、息子を抱きしめるシーンは涙を誘う。 自宅で病気が進行し植物人間になってしまった息子の看病にとり憑かれ、食事もノドを通らなくなる。そして、息子が唾液を気管に詰まらせ、目を剥いて苦しむとき、意識が戻ると信じて呼びかける。やがて、「もし、我慢できないのなら、イエス様のもとに飛んで行ってもいいのよ」と息子にいうセリフは辛すぎる。 ●ロレンツォ・オドネーを演じるザック・オマリー・グリーンバーグ  アフリカのコモロで、オモウリ青年に木彫りのナイフをもらって「キソキソキソ」と現地語でお礼を言う時の可愛い笑顔、そして、父と母の絵を描いた凧を海岸でオモウリ青年に揚げてもらうときのロレンツォの利発そうな顔も印象的だ。  その彼が、病気が進行して、免疫抑制剤による治療をうけ、毛髪は抜け落ち、四肢の硬直から歩行が困難になり、ロレツも回らなくなったときの痛々しいシーン、やがてベッドで寝たきりになり、唾液を気管に詰まらせ、目を剥いて苦しむ様子は、本当としか思えない天才的な演技でした。 その二 作品のメッセージ  医師免許を持つジョージ・ミラー監督は、夫妻が治療法を見つけ出す過程で、医師や科学者や支援団体らと意見が衝突するシーンを必要以上に露骨に描いて、重要なメッセージを述べている。 ●一つ目、患者の家族に対して、病気に立ち向かうことは医者だけではなく、患者家族にも必要であり、決して病気と闘うことをあきらめず、延命に消極的な姿は望ましくないこと。そして、治療法についても医者に任せきりにして盲目的に信用してはいけないこと。 ●二つ目、病気の治療研究のため臨床実験している科学者は無慈悲である。彼らにとって患者は統計的な臨床データをとるための実験材料でしかなく、患者は医学に奉仕して当たり前だと思っていること。 ●三つ目、財団は、家族の不満を吐き出す場や、医師の実験プログラムの発表の場や、寄付金を集めるだけの場ではなく、本来は、患者家族の声を研究者や医師に伝え、シンポジウムなどを開催して、研究者たちの連絡網を作り、治療法の共同開発の道を作ることで難病の治療法が早期に見つかる可能性があるということ。 ~~~   オドーネ夫妻が壁にぶつかり、傷つけあい、励まし合って前に進んでいく姿勢は、病気に対して決してあきらめない心が大切であるということを感じさせる。彼らの息子への愛が不治の病の治療法をわずか2年で見つけたという驚きの事実とともに、それにより多くの子供たちの命を救ったであろうことは決して忘れることはできない。  エンディングのロールで、この治療で救われた子供たちの笑顔の映像が次々に流れる。その家族が地獄の苦しみから救われたことを思うと、オドーネ夫妻の貢献の大きさは計り知れない。オーグスト・オドーネ氏がその後も継続しているミエリン再生プロジェクトは、他の脳の難病治療にも効果があるという。なんという探究心であることか。 追伸  オドーネ家族のその後は、この作品のwikipediaを参照ください。

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