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ロレンツォのオイル/命の詩

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5.0

ネタバレ執念とエネルギーの映画

物語は、オドーネ夫妻の一人息子(ロレンツォ)が、副腎白質ジストロフィーという難病を患ったところから始まる。  副腎白質ジストロフィーという病気は、余命2年という難病であり、研究も進んでおらず、治療できる医師がいないことを知り、愕然とする。  そこで、夫妻は、医学的知識もないにもかかわらず、自力で治療法を探そうと決意する。まず、その発想が、ビックリのだが、そこからの二人の執念は、 凄まじい。  素人の二人が治療法を探すことから、医師や科学者と衝突を繰り返すが、 この二人はへこたれない。  そして、特定のオイルを発見するに至るのだ。  このオイルの名が「ロレンツォのオイル」というワケだが。 ロレンツォは、このオイルを飲み、劇的な改善とまではいかなかったが、 全くの寝たきりの状態から、絵本を読むなどの回復をみせ、 2年という余命を存分に乗り越え、30歳で亡くなったということだ。 この夫婦の研究の過程の凄まじさは、ハンパじゃなかったんだろう。 ニック・ノルティとスーザン・サランドンの鬼に迫る演技は、 圧巻だ。  子どもを思う強い気持ちは、ここまで、突き動かせるものなのか。 そして、それを、成し遂げてしまう凄さ。  十分に、伝わってくる1作品である。  昔観たときは、そんな風に感銘を受けたが、 結婚して、子どもを持つと、自分は同じように出来るのだろうか?? ・・・と考えると、自信がない。  まず、発明されていない治療薬を、開発しようと言う発想が、自分にはない。 この二人であったからこそ、成し得た偉業であったように思うのだ。  この夫婦のようなことが出来なくとも、子どもへの愛がないというわけではない。  映画中、二人の死に物狂いの研究を眺めながら、 「もっと、子どもと一緒にいてあげたら」とも思った。  子どもと一緒の時間を、静かに持ちたい・・・と思うのも、 親の愛だと、そう思うのだ。 さて。 この映画はそこで終わってるが、 その後も、夫婦には試練が待ち受けていた。  この「ロレンツォのオイル」は、結局、発症した子どもに投与しても、 劇的な効果が得られず、 期待が大きかった分だけ、大きな批判とバッシングに晒された。  このオイル自身、高価であったのもあり、 治ると思ったものの、治らなかった失望感は、大きかったようだ。  しかし、この時、夫妻を擁護して、 このオイルの有効性を地道に研究したのが、 映画では、「悪役」として登場するニコラウス教授(夫妻の研究に真っ向から反対してた)  その教授が、研究を続け、 このオイルが、発症前の予防に効果がある・・と立証したという。 (ちなみに、ほぼ実名のこの映画だけど、このニコラウス教授だけは、 「悪役」と描かれているため実名ではない。)   この辺りも、実話の面白さ。 人間の面白さだと思う。  映画では、悪役だけど、 実際考えたら、どこぞの素人が、研究をして、 それを支持しろといわれても、そうはいかぬだろう。 その専門的な立場として、ワケのわからない薬を、阻止するという義務感があったに違いない。  それでも、この夫婦の執念に、ニコラウス教授も、ほだされたのか、 観念したのか。 ただ単に、このオイルに商品的価値を見出したのか。  映画の後の実話では、夫婦を支え、擁護する立場になっているのも、面白い。  人間は、時に、もの凄いパワーを見せ付ける。 二人は、衝突を繰り返しながら(この夫婦喧嘩もハンパない)も、 お互いを支えあいながら、研究に挑んでいく。    そう、この映画は、凄まじいのだ。 ただ「感動」だけを、全面に押し出した、作品ではない。 ドキュメンタリーに近く、前編を通して、お涙ちょうだいというポイントが、 ほぼない。  クールに辛らつに、ありのままを描いていく。 そのせいか、本当に疲れる。  夫婦の執念ともいうべき姿は、見ていて辟易するし、 夫婦喧嘩の場面には、「そこに愛があるのか」と疑問すら浮かぶ。  しかし、それが、本当の姿なのだろう。 着飾った愛や、泣かすためのシーンは描かれていない。   感じるのは、人間の執念と、そのエネルギーである。  重く辛い現実の描写が続き、ほとほと疲れた頃の、 ラスト・シーン。  まるで、希望の小さな輝きのようである。 その私の感じることの出来た小さな希望の輝きが、 このオイルが、ここから始まったことを、表現しているように感じた。   ロレンツォの母親の、 「私は、息子を沈黙や無知の世界に置き去りにしたくはない」という台詞が印象的である。   自分の「無知」によって、子どもを犠牲にしてはならない・・という事だろうか。 もし、それが、この作品の根本であるとするのなら。 この映画によって、副腎白質ジストロフィーという難病の知名度はあがったことは間違いなく。  この映画の有益性は十分にあるということだろう。

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