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ロングウェイ・ホーム

ロングウェイ・ホーム

A LONG WAY HOME

95

一人旅

5.0

涙が溢れる家族ドラマの傑作

ロバート・マーコウィッツ監督作。 幼い頃両親に捨てられ生き別れた三兄妹が長い年月を経て再会を果たしていく姿を描いた、実話を基にした家族ドラマ。 感涙必至の感動作。携帯電話、ネット・SNSが普及した現在では、「生き別れた弟妹を探そう!」Facebook・Twitter検索ポチッ。「見つけた!メッセ送ろ♪」と何の苦労もなく簡単にエンディングを迎えられそうなお話だが、製作当時の1980年代初頭ではそうもいかない。現在では描くことの難しい“アナログ”的な「兄妹再会物」の傑作として一見の価値がある。また、本作は元々TV映画として製作されたそうだが、TV映画にありがちな杜撰な編集は見られないし、90分という上映時間も丁度いい。ちなみに現時点では未DVD化なのでVHSで鑑賞するしかない。 ストーリーは兄・ドナルドの視点で進行し、何の手がかりもない状態から、幼い頃生き別れた弟・デビッドと妹・キャロラインの行方を探そうと奔走する様子が描かれる。三兄妹が過去に身を置いていた擁護センターのカウンセラーに弟妹の所在を聞き出そうとするも「18歳未満には情報を与えてはならない」という規則を前に挫折を余儀なくされる。いざ18歳を迎え改めて弟妹に関する情報を得ようとするも、今度は二人が里親の元から家出したという事実を突きつけられる...。 あと一歩で再会というところで、運命の悪戯がそれを妨害する。しかし、ドナルドは諦めない。「家に帰るんだ」と言うドナルドの姿が印象的で、彼にとって弟妹こそが帰るべき“家”であり、本作はタイトル通り“家に帰るまでの長き道のり”を描き出す。 ドナルド、デビッド、キャロラインの兄妹愛に涙が止まらなくなる作品だが、ドナルドとその里親夫婦の関係性というのがすごくいい。愛があることが当然のように求められる本当の親子ではなく、血の繋がりのない親子関係だからこそ生まれる感動というものがある。ダルデンヌ兄弟の『少年と自転車』と同じように、元々は他人同士という養子と里親の親子関係の中で、近づ離れずの微妙な距離を保ちながら、親子の間の心の距離を縮めるための努力と模索の様子が描かれる。 ドナルドが擁護センターに頻繁に電話していた事実を知った里親が「もう弟妹には会えないんだよ!諦めろ」と語気を強めて話す里親。その言葉を聞き、家を出て行く決意を固めていくドナルド。里親にとっては今の家族がドナルドの本当の家族であってほしいし、ドナルドからしてみれば生き別れた実の弟妹を探したいという気持ちは当然のもの。養子と里親、双方の気持ちが痛いほど伝わってくるから観ていて居たたまれない気持ちになるし、双方の発言・行動の共通点はその対象こそ違うものの家族に対する愛が根底にあるということ。どちらか一方が悪いということは決してないし、だからこそ少しの居心地の悪さを感じてしまう。 母親がドナルドにそっとお金を手渡すシーンや、恋人の写真を里親夫婦に見せるシーンがとても印象に残り、この時点で既に泣きそうになる。 また、第三者的立場からドナルドをサポートする擁護センターの女性カウンセラーも脇役として素晴らしい立ち回りを見せる。ドナルドの弟妹愛がセンターの規則を乗り越えてしまうシーンがこれまた感動的だ。 クライマックスは号泣必至。欲を言えば、その後の里親夫婦とドナルドの関係についても一歩踏み込んで描いてほしかったが、ドナルドの長年に渡る愛と努力が実を結ぶ瞬間に涙が止まらなくなる。感動的な音楽による場面の盛り上げも完璧だ。

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