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ワーテルロー (1969)

WATERLOO

監督
セルゲイ・ボンダルチュク
  • みたいムービー 26
  • みたログ 162

3.37 / 評価:87件

名作になりそこねた大作

  • yuki さん
  • 2018年8月1日 13時44分
  • 閲覧数 2159
  • 役立ち度 7
    • 総合評価
    • ★★★★★

戦争映画史のなかでも屈指のスペクタクルを誇る。エキストラにソ連兵を大量投入した本物の重量感は無二の映像である。数千のイギリス軍にさらに数万のフランスの騎兵隊が多い囲む映像は圧巻のひとこと。そこに写っているのは映画ではなく歴史のワンシーンである。ソ連製作だから作れた、いまはもう絶対に作れないであろう映画である。

エポックメイキング的な作品だが、ひとつ欠点がある。つまらないのである。
第一に、両国の軍人の描写不足が大きい。主役のナポレオンですら、その内面が描かれることなくワーテルローの戦いに突入してしまう。イギリス側に至ってはウェリントン公がわずかに描かれるのみ。このウェリントン公がいい味を出してるだけに、そのコク不足がなおさら惜しく感じる。

第二に、戦争のスペクタクル感は素晴らしいが、その残酷さを描ききれていないところだ。例えば人が撃たれても刺されても、血の一滴も出やしない。お上品すぎるのだ。ペキンパーに撮らせろとは言わないけれど、これでは戦争の酷薄さが伝わらない。
確かに、燃え上がるウーグモン邸の白煙のなかから亡霊のように姿を現すフランス兵たちのワンカットなど、映像の奇跡が起きたと立ち上がって拍手したくなるような素晴らしいシーンがこの映画にはたくさんある。
歴史の重厚さは描けている。しかし、それは戦争の実態を描くのに必要な要素だっただろうか。しかもどうやら監督の意図としては、戦争によって失われてゆく命をテーマにしたかったようだが、なおさらこれらの優雅な演出はミスマッチである。とつぜん前線のど真ん中で「どうして僕らは戦い合わなくちゃいけないんだ!」と叫ばれても、こんな調子だからまったく胸に刺さらないのである。

さらに大量エキストラの悪い面も出て、斬って殺して殺される場面になってもまるで安いTV時代劇を見てるかのような調子で、殺し合いに覇気がない。そんなのが遠景で画面いっぱいに写ってるわけだから、そういった緩さが映画全体に溢れてしまっているのである。

そして最後に、この映画は短すぎた。二時間弱の長さなのでそこそこの上映時間ではあるが、正直まったく尺が足りてないと感じた。「ワーテルローの戦い」を描くのには、3時間、いや4時間あっても足りなかったのではないかと思う。少なくとも二時間の物語ではなかったのは確かだ。この尺に収めようとして、映画全体がギシギシといびつな音を立ててしまっている。ナポレオンの苦悩を描き、将軍たちの政治を描き、兵士たちの闘いを描いていれば、この映画は歴史に残る大作になっていたと思う。

ひとことで言えば、中身の厚さが足りなかった。とても惜しい映画だ。

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

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