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ワイルド・エンジェル (1966)

THE WILD ANGELS

監督
ロジャー・コーマン
  • みたいムービー 8
  • みたログ 45

3.85 / 評価:13件

殺してしまうか、生き直させるか…

  • gypsymoth666 さん
  • 2013年7月7日 9時02分
  • 閲覧数 775
  • 役立ち度 2
    • 総合評価
    • ★★★★★

低予算で1つのセットで2本の映画を撮るような、一流の世界では通用しない、しかしそれもエコノミカルに徹底して採算を考えた技術がなければ不可能な、独立独歩の映画製作を貫いてきたコーマン。ゆえにこの映画もそのテイストは存在する。映画の場面はかなり限られる。荒くれ軍団の大型バイクを疾走させ、警察に反発し、仲間同士でビールをあおり、セックスし、ケンカをして、警官に追跡されて怪我をした仲間を病院から救いだして、ハイ、終わり!という90分。

プロデューサーでもあるコーマンは現代的なテーマを取り入れ、若者の破壊的衝動を主人公たちに託すが、映画は登場人物たちへ、わずかにでも観客に共感を抱かせ、最終的には破綻することなく暗いエンディングへと着地する。つまり大きな展開は乏しいものの理屈にあう形で最後までつづられる。

徹底して、自分たちがとりたいものをとる!カタチにしたいんだ!と突き抜けた結果、興行的にも評価的にも大成功し、時代を象徴する作品までに至った、フォンダと俳優で監督のデニス・ホッパーの『イージー・ライダー』。この『ワイルド・エンジェル』をヒントに、ルーツにしつつも『イージー・・・』と決定的な違いが明確になる。ビジネスマンであるコーマンが若者の今をリアルなバイカーたちに託し切り取りながら、クリアな頭脳でそろばんをはじいていたのに対し、フォンダとホッパーは若者の自由を生きて、ドラッグをやって、旅をして、行き場のない、終わりのなく際限のなく続く自由をカメラの外でも前でも希求する。自由を求め果てた末に、自由に囚われてしまった、逃れられない公私にわたる欲望のどん詰りをそのまま映画にしていた。映画を作るか、映画を生きるか・・・。明確な違いを実感する。

それでもクライマックスの教会のシーンの当時の若者たちの破壊的な行為には、さまざまなものを考えさせられる。
死んだ仲間を弔うために納棺し、牧師に祈りをささげるよう依頼し教会に集った暴走族・エンジェルスの一行。牧師が祈りの言葉をささげる中、エンジェルスのメンバーたちは「お前に何がわかる?!」「神なんかいない!」「聖書とかではなく、もっと自分の言葉で話せよ!」と牧師をののしる。代表して仲間の死に傷つくリーダーのフォンダが「俺たちはただ自由に生きたい!どこまでもバイクで自由に走って、酒を飲んで、囚われずにいきたいだけだ!」と、そんなことは限界があること、その果てには死しかないことは理解できている。目前の棺の中の仲間が象徴している。しかし叫ばずにはいられないのだ。言葉に時につまりながら立ち上がり、そう牧師に叫ぶ。そして死んだ仲間を棺おけから出し椅子に座らせタバコをくわえさせる。つまり仲間の遺体を使って遊ぶ。かわりに牧師をしばり棺おけに入れる。その後教会の椅子などをすべて破壊し、ビールやドラッグを持ち込んではあおって、踊りに相手をかえて力ずくのセックスに興じる。死んだ仲間の彼女は次々にレイプされる。その後全員で何事もなかったかのように墓場に向かい、勝手に墓穴を掘り(すでに掘られている…)、そこに棺おけを入れる。警官のサイレンが響くが、フォンダだけは逃げず、棺おけに土を一人かけ続ける。そしてつぶやく。「行き場などもうないんだ・・・」

ビジネスマンでもあったコーマンはあくまで自由の限界をさとった主人公に、再度“生き直す”希望を、エンディングにもたらしたとも思える。しかしこれは体制に屈したとかではないと考える。すでに中年の域にあり自らのインデペンデントの映画会社を経営していた“大人”として、若者たちを見据える彼の考え方だったのだろう。まだまだ無名で未来のわからなかった最後の最後まで行きたい!と願うフォンダにホッパーは、同じバイカーを主人公にした『イージー…』で、最後に主人公たちを現実と衝突させ殺してしまった。結果、『イージー…』は永遠に語り継がれる作品となった。バイカーたちは映画の中では殺人にも強盗にも手をそめていない(唯一、警察のバイクを盗み逃げたメンバーだけが死ぬ)。どんなに荒くれ者たちであっても、神聖なる場所を破壊させても、生きなおす、生き続ける可能性を残したコーマン監督。これこそがコッポラやジェームズ・キャメロン、ロン・ハワード、ジョナサン・デミら名監督たちに世に出るきっかけを与えた、後任を育てる能力にたけた人物の生き様の象徴のように感じられる。
気づきのチャンスを与え、見守る『コーマン学校』の温かさと青春の激しさと切なさが同居する一作といえる。

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