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ワイルド・ヒーローズ/暗黒街の狼たち (1989)

義胆群英/JUST HEROES

監督
ジョン・ウー
ウー・マ
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2.71 / 評価:7件

張徹組、最後のご奉公

  • lamlam_pachanga さん
  • 2010年7月10日 22時00分
  • 閲覧数 611
  • 役立ち度 3
    • 総合評価
    • ★★★★★

突然ですが、張徹(チャン・チェ)をご存知でしょうか。

香港映画と言えば、一昔前までは、ブルース・リーやジャッキー・チェンと同義だった時代があります。即ち、「香港映画=カンフー映画」と言う、あの類型的なイメージです。その潮流を香港映画界に生み出し、ヒット作を連発することでそれを定着させた張本人。それが、張徹です。その監督キャリアで90本を超える作品を手掛け、初期の『片腕必殺剣』や『ヴェンジェンス/報仇』、中期の『ブラッドブラザーズ/刺馬』や『裸足の洪家拳』に代表される、「血と復讐の張徹路線」と呼ばれる、独自のカンフー美学を完成させた人で、その影響は、多くの後進に受け継がれています(この影響が特に顕著なのがジョン・ウー)。

本作、『ワイルド・ヒーローズ』は、ジョン・ウーとウー・マの共同監督による、正真正銘の黒社会映画(香港ノワール)ですが、じゃあ、何故カンフー映画の祖である張徹を持ち出したのか。それは、この映画が、所謂70年代のショウ・ブラザース(香港映画第一次黄金期を創出した大手映画会社)を支えた張徹と、その愛弟子たちによって作られた映画だから(その経緯は寡聞にして知りません)。

この映画のスタッフ・キャストは、まさに「張徹組」と呼ぶべき面々で構成されています。共同監督を張ったジョン・ウーとウー・マは、張徹の下でその映画キャリアをスタートさせた人(ふたりとも張徹の助監督を務めた)。脚本兼主演のダニー・リーこそ、張徹作品での目立った活躍はないものの、その他、デビット・チャン、チェン・カンタイ、友情出演のティ・ロン等々、香港カンフー映画に詳しい諸兄には、私の説明は無用なくらい、往年の張徹映画で主演を張ったスターが勢揃い。老いた張徹自身、本作では製作総指揮の名義貸しではありますが、スタッフロールにその名を連ねることで、自らが育てた弟子たちの映画作りに目を光らせているかの如き威光を感じさせます(笑)

但し、映画自体は、残念ながらとんでもない代物です。

1989年製作の映画ですが、その当時の印象にして、時代錯誤も甚だしい(苦笑)あの『男たちの挽歌』以降に製作されているにも係わらず、映画の後進性ではあの傑作の100歩後を歩むが如き物語。脚本を手掛けたダニー・リーのセンスが腐ってるのか(この数年後、彼は香港有数のプロデューサーに化けるんですが)、ウー・マが手掛けたドラマパートの陳腐さによるものなのか。ジョン・ウーによる銃撃戦は流石の見応えでも、このバランスの悪さの中では、その努力も焼け石に水。

先に「血と復讐の張徹路線」と紹介しましたが、この映画に係わった面々は、その影響をモロに受け継いでいる御仁ばかり。ジョン・ウーを筆頭に、ティ・ロンやチェン・カンタイ、そしてダニー・リー等は、そのニヒルな面構えからして、思い切り暑苦しさを感じさせます。そんな彼らが「張徹親父のために!!」とばかりに、ストーリーとは無関係に変な熱気を撒き散らすものだから、全編を通してその空気たるや、他の映画ではちょっとお目にかかれないほどに異様なものがあります。

その雰囲気を、一体何と形容すればいいのか。

同窓会・・・でしょうか。

数十年を経て再会した、仲の好い旧友たちの集い。

そんな空気を、香港ノワールの定番中の定番と言うべき抗争劇に持ち込んだものだから、観てるこっちが気恥ずかしさを覚え、「張徹組(全員いい年こいた大の大人です)」による学芸会か何かを観ている様な錯覚に陥ってしまうわけです(苦笑)

だから、と結ぶと納得されない方もいるでしょうが、私はこの映画が好きなんです。

確かに「駄作」ではありますが、こう言う「映画人同士の絆」を感じさせる映画があってもいいかなと思います。例え、個人以上で愉しめる代物ではないにしても、ね。

物語は他愛なし。

その演技も観るものなし。

脚本は時代錯誤。

演出も平凡極まりない。

そんな映画、観る価値あるのかと思う方もいるでしょう。正直なところ、この映画を無視した方は、「正解だな」と思います。でも、この日本では極めて少数だと思われますが、私同様に「張徹組最後の奉公」を見届けなければと思うなら、この映画を黙ってその手に取り、そして彼らの「絆」に苦笑いしてあげて下さい。

忘れてました。

チャウ・シンチーが大きな役で出演している、恐らく唯一の香港ノワールです。

その意味では、観る価値があるかもしれません。

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

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