電話のベルが恐怖を生み出す
- gar***** さん
- 2010年1月18日 13時31分
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心臓の病気で寝たきりの女性レオナ(バーバラ・スタンウィック)は、ある日、夫の職場に電話をするが交換手のミスによって殺人計画の会話を聞いてしまう。驚いた彼女は、殺人を防ごうと、手を尽くすが…
1943年に制作されたラジオドラマを元に作られた作品です。
携帯電話がある今では、こういう電話交換によるミスはありえませんが、まだ電話交換手がいた時代における偶然の出来事が言い知れぬ恐怖を生むサスペンスです。
まず、この映画の魅力は何といってもそのストーリー展開でしょう。夫は帰らず、使用人は留守、そして時間はもうじき深夜…という何とも暗く閉ざされた密室で、偶然知った殺人計画。しかもそれには帰らぬ夫が関わっていると知った妻が、どんどん追い詰められていく過程は、まさに形容しがたいほど怖いです。特に、ラストのセリフの何ともいえない怖さといったらありません。ホラー映画のように幽霊が出たり、スプラッタなシーンがあるわけでもありませんが、このまるで一人の人間の混乱と興奮状態がもたらす怖さにゾクリとさせられます。
そんな映画でとびきりの名演を見せたのが、ヒロイン、レオナを演じたバーバラ・スタンウィックとレオナの夫ヘンリーを演じたバート・ランカスターの二人です。スタンウィックといえば、『教授と美女』のダンサーや『レディ・イブ』の女詐欺師、そして『深夜の告白』の殺人教唆の悪女など、とびきりセクシーな美人であると同時に、幅広い役柄を演じられる演技派女優として知られてますが、異常な状況に追い詰められた女性の恐怖と混乱状態、そして惑乱ぶりを実に生々しく演じています。特に目を奪われるのは、ラスト近く。殺人計画の真相を知ってからの演技です。恐怖におののく彼女の姿には、本当に圧倒されます。
そして、そんなスタンウィックと堂々とわたりあったのが、まだ若手俳優だったバート・ランカスター。貧しい身の上から金持ち娘のレオナと逆タマ婚を果たすが、妻の財産で養われていることに不満を抱く夫…まさに野心を飼殺しにされた男の屈折した心理状態をランカスターが巧みに演じてます。彼の演技の素晴らしい所は、見る者に様々なイマジネーションをもたらす豊かな人物描写です。劇中の一つ一つの行動から、この男の心理を想像しながら見入ってしまいました。後年ランカスターは、このような豊かな人物描写を用いて多くの出演作品で名演を見せてくれますが、すでにこの頃からその片鱗を見せていたといえるでしょう。
電話のベルが恐怖を生み出すサスペンスの良作。スタンウィックとランカスターの演技も必見です。
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- 不気味
- 恐怖
- 絶望的