レビュー一覧に戻る
コールド・フィーバー

bakeneko

5.0

ネタバレ日本人とアイスランド人の共通心象風景は…

アイスランド旅行中に事故死した両親を弔う為に、遥々アイスランドに出向いた青年がアイスランドを縦断する中で出会う様々な人々との触れ合いと過酷な自然環境を通して、日本人とアイスランド人に共通するものを浮かび上がらせてゆく―“アイスランド厳冬ロードームービー”であります。 1984年8月にアイスランドで発生した東京大学の地質調査隊3名の死亡事故の現地葬儀の様子に感銘を受けたフリドリック・トール・フリドリクソンが、当時ジム・ジャームッシュの「ミステリートレイン」で注目されていた永瀬正敏を起用して創ったアイスランドロードムービーで、「春にして君を想う」では主人公が春―夏期のアイスランドを彷徨したのに対して、本作では厳冬のアイスランドを主人公が車&徒歩&馬で踏破して行きます。 “帽子なしで大丈夫かな~(-30℃を下ると頭の毛細血管が凍って破断します―ロシア人が頭をすっぽり覆う帽子を被っているのは伊達じゃなくて必須だからです)”と厳冬の路を歩く主人公が心配になってくる作品で、雪が積もらずに吹き飛ばされてゆくほどの冷たい地面と一面真っ白な風景に圧倒されます。 そして、旅行者、写真家、研究者、強盗?、叫び声で氷山を割る幽霊?…と様々な人達と出逢うなかで、人間の本質的な暖かさをユーモアと人情の機微で見せて行く作劇となっていて、“今度は何が出てくるのか?”―と意外性に先が読めない展開に惹きつけられます。 そして、“日本もアイスランドも、火山と温泉があって…”と語られる両国の共通点も頷かせるものがあり、幽霊を普通に見るアイスランド人と祖先と肉親の霊を悼む日本人の感性の共鳴性に不思議な親和感を現出させています。 鈴木清順、リリ・テイラーらにゲスト出演や露天温泉?などの自然の情景などでも驚かせてくれる作品で、アイスランドには“冬には行けない場所”が沢山あることも旅行時の参考になりますよ! ねたばれ? 本編唯一の悪役?である―アメリカ人カップルの名前は“ジャックとジル”。これはマザーグースの詩に出てくる有名なバカカップル?で、日本の太郎と花子の様に対となっている名前の組み合わせであります(「ジャックとジル」というアダム・サンドラー2役&アル・パチーノ怪演の映画もありましたよね!)。 元となった詩の一例を… ジャックとジル バケツにいっぱい   水を汲みに丘を上った   ジャックがこけて 頭を割ると   ジルもあとから転げていった   立ち上がったジャックは飛び跳ねながら   一目散に家に帰ると   頭に酢をかけて消毒し   ぼろ雑巾で包帯したとさ 英語には “Every Jack has his Jill. =“どんな人にも、その人にふさわしいパートナーがいる”という言い回しがあります。

閲覧数782