ここから本文です

上映中

トラベラー (1974)

MOSSAFER/THE TRAVELLER

監督
アッバス・キアロスタミ
  • みたいムービー 10
  • みたログ 83

3.76 / 評価:33件

てめえは誰んとこのガキだ?

  • ogi******** さん
  • 2021年9月23日 16時43分
  • 役立ち度 0
    • 総合評価
    • ★★★★★

『トラベラー』مسافر‎ Mosāfer、The Traveller)1974

イランの偉大な監督アッバス・キアロスタミの長編二作目。1979年のイスラム革命が起きる前の作品。当時イランはパフラヴィー朝の帝政。立憲主義・反共親米国家だった。ホメイニ師率いるイスラム革命が起きてアメリカ人が人質になった事件は「アルゴ」として映画化された。あの映画の中のイランはアメリカ人を敵視する恐ろしい異教徒の国だった。

イスラム教が全ての規範である現在とは違い1974年のこの映画の中の男性はスーツやTシャツやジーンズを着ている。しかし女性の姿を街中で見ることは少なく登場する女性も伝統的な服装だ。そしてカッサムの母親は文盲だ。

主人公カッサムは箸にも棒にもかからない悪ガキだ。学校をサボって朝からサッカー。歯医者に行って遅れたと嘘をついて学校には遅刻。先生の目を盗んで父につけて買ったサッカー雑誌を読み耽る。親の金を盗む。親や教師の説教も効き目がない。

カッサムはイランの南部に住んでいる。首都テヘランで行われるサッカーの試合がどうしても観たくて金を集めようとする。万年筆やカメラを雑貨屋に売りにいくが相手にされない。この時、雑貨屋の主人とカッサムの会話で面白いことに気がついた。
カッサム「このカメラ買ってよ」
主人「中身が空だぞ。ダメだ」
カッサム「なぜだよ。買ってくれよ」
主人「お前はどこの子だ?」
カッサム「○○の息子だよ」
主人「○○の息子なら40で買ってやる」
カッサム「他の店なら200で買ってくれる」
主人「だったらその店に行きな」

中身ががらんどうのカメラでも知り合いの息子なら買ってやるというのが面白い。町内会の息子なら無下にはしないという感じかな。

共同体の繋がりがある社会なんだなと思う。

カッサムは空っぽのカメラで友達や通行人の写真を撮る仕事を始めて金を得る。仕事というより詐欺だ。チームの財産であるサッカーゴールやボールを売り払って金を作る。度し難い悪いガキだ。

テヘランまでのバス代やチケット代を何とか工面して深夜バスでテヘランに向かう。行列に並んでチケットを買おうとするが自分の前で売り切れになってしまう。さてカッサムは念願の試合を観ることが出来るのか?

最後の方になってくるとカッサムの夢が叶うといいのにと声援を送っている自分に気がつく。しょうもない悪ガキだと思っていたのに。

しかし共同体の好意を利用して金を騙し取ったカッサムを待っていたものは皮肉な結末だ。

その皮肉な結末は「因果応報」「勧善懲悪」という説教じみたものではなくて「愛宕山」のオチみたいだ。だからこの映画を観た後は爽やかな気持ちが残ってカッサムに愛情を抱いてしまう。

もし目の前にカッサムが現れてこの中古の万年筆を買ってくれよと言われたらこう聞くだろう。
「あんだとぅ?てめえは誰んとこのガキだ?」

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

イメージワード

  • 笑える
  • 楽しい
  • かわいい
  • コミカル
このレビューは役に立ちましたか?
利用規約に違反している投稿を見つけたら、次のボタンから報告できます。 違反報告
本文はここま>
でです このページの先頭へ