レビュー一覧に戻る
花婿来たる

花婿来たる

HERE COMES THE GROOM

114

rup********

3.0

ネタバレ時代遅れの感はあるものの、楽しめる要素も

フランク・キャプラが製作&監督をした日本では劇場未公開の作品。 私は、昔WOWOWで「恋は青空の下」と共に放送されたときに初めて観たのですが、現在は「花婿が来た」のタイトルで国内盤DVDが出ています。 パリに派遣されている新聞記者ピート(ビング・クロスビー)は、戦災孤児たちの養親探しに尽力していて、本国アメリカにいる恋人エマデル(ジェーン・ワイマン)のことをほったらかしにしていたところ、エマデルは痺れを切らせて、自分が秘書として働いている不動産会社を経営する旧家の御曹司ウィルバー(フランチョット・トーン)と婚約してしまい、そこへピートが2人の戦災孤児を連れて帰ってくるというシチュエーションになります。 ピートは、ウィルバーにエマデルの心をどちらが獲得できるか正面切って勝負を申し出て、フェアな戦いをするために、ウィルバーの屋敷の門番小屋に住み込ませてもらってエマデルとの復縁のチャンスを狙うことに。 ウィルバーの遠縁に当たるウィニフレッド(アレクシス・スミス)がウィルバーに秘かに恋をしているのを知り、奥手なウィニフレッドを華麗なレディに変身させて、ウィルバーに近づけようとするのですが、女性のセックスアピールでウィルバーの気を惹かせようとする古典的な方法なのが引っ掛かるところ。 「男っていうのはバカな女のほうが好きなんだ」というピートの台詞も、旧弊な伝統や格式に縛られずもっと自由に自分らしく振る舞った方がいいという進歩的な意味合いで言っていると思うのですが、女性を下に見るような価値観が出ているようにも感じられてしまいます。 さらに、「或る夜の出来事」でクローデット・コルベールがスカートの裾を持ち上げて脚を見せて車を停める有名なシーンを思い起こさせるような仕草をアレクシス・スミスにさせる場面があっても、前作のような洒落た雰囲気はありません。 また、結婚式のバージンロードで父親が娘に囁きかけるのも「或る夜の出来事」と同じ趣向なのですが、本作では感動的なシーンにはならず、子供をだしに使うあざとさのようなものが透けて見えてきてしまいます。 主人公であるピートがちょっと常識はずれな方法で恋人を奪い返そうとする一方で、恋敵であるウィルバーのほうが懐の深い良識ある紳士という印象を強く受けてしまうのも、感覚的なズレがあるように感じられました。 このように、内容的には30年代を引きずったような古めかしさが気にかかる一方で、ユニークな歌唱シーンが本作を忘れがたいものにしています。 本作のテーマソングとも言える『冷たき宵に(In the Cool, Cool, Cool of the Evening)』は、この年のオスカー受賞曲になっていて、ビングとジェーンが掛け合いで歌う場面はやはり素晴らしい。 2人のふざけ半分のナチュラルで楽しい雰囲気が全開で、このシークエンスを観る限り、キャプラ監督の歌唱場面の演出におけるセンスの良さは衰えていません。 序盤で、目の不自由な少女テレサを演じたアンナ・マリア・アルバゲッティが「リゴレット」の『慕わしき御名』を美しいソプラノで歌うシーンも印象的。 また、飛行機の中で、ルイ・アームストロング、ドロシー・ラムーア、キャス・デイリー、フィル・ハリス(ディズニー映画ファンには「ジャングル・ブック」のバルー、「おしゃれキャット」のトーマス・オマリー、「ロビン・フッド」のリトル・ジョンの声でお馴染み)といった面々が現れて、皆でジャム・セッション風に歌が歌われるのも、かなり唐突で不自然な印象を受けるものの、楽しい空間が生み出されています。 さらに、ピートがレコードに吹き込まれているエマデルのボイスレターを聴くシーンでは、レコード盤の上にピョコンと小さなエマデルが現れて話し始め、針が引っ掛かるとエマデルの動作も連動して引っ掛かったりするのも面白いアイデア。 こういったシーンが挟み込まれていることによって、本作はエンターテインメントとしては楽しめる要素の詰まった作品になっているのではないかと思います。

閲覧数364