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とらんぷ譚

とらんぷ譚

LE ROMAN D'UN TRICHEUR

77

UBUROI

5.0

ピカレスクものの傑作!

字幕で見てもサッシャ・ギトリの話術のおもしろさは秀逸だ。この映画はいわば紙芝居のようなもので絵(映像)に合わせた語りがストーリーを説明し、会話までしてしまう。演劇人であるサッシャ・ギトリの技芸とトーキー初期の映画技術のおたがいの不利を掛け合わせてプラスにした逆転劇ともいえる。たとえば、ギトリが複数の国籍のさまざまな階級の人物に扮して見せる舞台の手法とフィルムをつなぎ合わせた回転ドアのカットの組み合わせで見せるところやフィルムを逆回転させて警備隊の行進を見せるところ等、映像的の工夫がふんだんにあって楽しませる。物語は、ひとりの詐欺師の半生だ。一〇歳で一一人の家族を一度に亡くすという悲劇的な事件から話ははじまる。毒キノコを食わずにすんだために助かったわけだが、そこから彼の数奇なピカレスク人生が始まるのだ。波瀾万丈だった生き方を回想するかたちでドラマは進行していく。モナコでのいかさま、戦争体験、女泥棒や短い間の結婚生活、等々。これだけの要素をたった七七分に詰め込んでしまった技法にも驚く。たったひとつかふたつのことしか語ることのない『アバター』はその倍以上、一六四分も費やしている。後半は短い時間に出会った人々との再会である。折り返される人生とラストのどんでん返しも実に鮮やかだ。

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