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セブン

セブン

SEVEN/SE7EN

126

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4.0

ネタバレYou get me closer to GOD

私がこの映画に後味の悪さを感じていた点は妻を殺されたミルズが犯人を射殺して云々ではなく、サマセットの今後についてでした。 ラストでサマセットは上司に「これからどうするんだ?」と聞かれ「なんとかやっていくさ」と答えます。 昔の自分はこの場面を元々世の中に嫌気がさしていたサマセットが今回の事件で完全に絶望してしまい、あのまま刑事を辞めてしまうのだと解釈していたんです。 ミルズと犯人の影響で少しだけ活気を取り戻しつつあったのに、結局サマセットの心は救われないまま終わるのかと。 その後味の悪さも決して嫌いではなかったんですけどね。 しかし何度か観ているうちに解釈が変わり、サマセットは今回の事件に絶望したからこそ闘志を取り戻し、これからも刑事を続けていくと気付いたのです。 I’ll be around (なんとかやっていく)という言葉の意味を調べてみてやっと分かりました。 この映画は退廃的で悪趣味だし胸糞悪いし、最高にひねくれてます。 おまけに厭世的で説教臭いわ辛気臭いわ、嫌味ったらしくて皮肉たっぷり。 だがそれがいい。 このひねくれた人間ドラマこそがデヴィッド・フィンチャー作品の醍醐味だと思います。 ああまったく世の中ってクソだよな、仕事が面白い奴なんかいるかよ、こんな世界に生まれてくる子供は不幸ってもんだ… この映画はそう言いながらも実は人間の愛や良心を完全に諦めている訳ではないんですよ。 サマセットの言葉にそれが集約されていると思います。 「心地よくリラックス出来て、揺れる我が家か」 「今考えても子供を持たないという決断は正しかったと思う、だがもし違う選択をしていたらと思わない日はない」 「子供を産まないつもりなら妊娠のことは黙っておけ、でももし産むのなら精一杯甘やかして育ててやれ」 これらの言葉からは、こんな世の中だからこそ嫌なことは笑い飛ばし、今目の前にあるかけがえのないものを大切にしていこうという控えめな前向きさと、わずかばかりの希望を感じることが出来ます。 荒んだ物語の中で希望の象徴だったトレイシーが殺されたのは悲劇ですが、彼女の死は皮肉にもサマセットが戦場に留まり続ける決定打となったのです。 だからこの映画はただのバッドエンドではありません。 分かりにくいけど「それでも生きていかねば」という熱いメッセージが含まれているんです。 この世はクソだが戦う価値がある、上等じゃないですか。 私はこれをひねくれたフィンチャーなりの魂の叫びだと解釈しています。 魂が込められているからこそ、この作品は人々の記憶に残る名作になった。 監督はジョン・ドゥが犯した殺人よりも大胆で残酷なことを映画でやってみせたのです。 多くの観客の心を抉りましたからね。 やはりデヴィッド・フィンチャーは天才。 余談ですが、この映画がお好きで考察などが趣味だという方にはモーガン・フリーマンが出演している「ストーリー・オブ・ゴッド」というドキュメンタリーをおすすめします。 宗教がテーマですが胡散臭さがなく面白いですよ。

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