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3月のライオン 前編 (2017)

MARCH COMES IN LIKE A LION

監督
大友啓史
  • みたいムービー 742
  • みたログ 3,505

3.97 / 評価:2,955件

きれいごとではないが、とても優しい映画

  • ookina_haruko_chan さん
  • 2017年3月21日 2時00分
  • 閲覧数 1247
  • 役立ち度 4
    • 総合評価
    • ★★★★★

原作は未読です・・・というか、映画を観に行く直前に、図書館でほんの2〜30ページほど読みましたが、ほぼ読んでないに等しいです。
アニメも見てません。
なので、作品世界をよく知らない身からしてみれば・・・
本作には神木くん演じる主人公とそれを取り巻く人たちのキャラクターの魅力、人間同士のつながりあいとぶつかりあいが本当によく描かれている、と思いました。
神木くんは本来持っているひょうひょうとした感じやかわいらしさをほぼ封印して、「孤独とたたかってきたケナゲな少年」を表情の端々、固くこわばった躰つき、全身で表現している。
大友監督は、ハードボイルド的な作品が続いていましたが、深い人間ドラマとしての漫画の世界を映画で真摯に伝えようとする、熱意が感じられました。

あんな風にたった一人で生きてきた主人公が、そこにひょっこりと温かい家族と出会って仲良くなる、というのは、漫画ならではのちょっと無理めの設定。
でも、だからこそ描ける世界がある。
漫画っていうのは、ひとつの理想を描き、読者が素直に夢や希望を託すことが許される、貴重なメディア。
アニメはその延長線上で、イメージをこわすことなく、想像の世界で遊ぶことができる。
実写映画になったとたんに、ある現実感をともなうから、違和感を感じる人も多いのだと思います。

同じ漫画でも「バクマン」や「土竜の唄」、「ウシジマくん」みたいな戯画化された世界だと、多少の違和感は見るほうも許容できるのでしょうが、うつくしい少女漫画的世界だと差異が目立ってしまって、「原作とちがう」と憤る人もいるのでしょう。

でも本作を見て感じたのは、決して従来の少女漫画的な「甘い」世界ではなく、人が職業と対峙して生きていくことの本質を描く、どちらかというと、少年漫画の世界に近い気がしました。
特に、加瀬亮扮する天才棋士と、佐々木蔵之介扮する、温厚で真面目で努力家の棋士とのたたかいっぷりは、主人公をめぐるドラマ以上に強く心に響きました。
すーっと吸い寄せられるような、引いた演技の加瀬対、緊張がみなぎり汗が飛び散ってきそうな空気感の佐々木。
勝負の世界というのは本当に奥深い。
人間としての生き様が駒の打ち方ひとつにも表れている。

もうひとつは、甲本雅裕演じる、行き詰っている棋士。
負けた日は家で家族に暴力をふるい、それがもとで離婚にいたる寸前。
負けっぷりも悪く、ずっと年下の零に因縁をつけてくる。
イヤな男ながら、その男の人生の苦渋がよく表れていました。

そして零のほうも、勝ち抜くことで主人公は育ての親、一緒に育った義理の姉との関係がますます悪くなっていってしまう。
有村架純のすさんだような、挑発的なあの役どころは、やけにリアルに見えました。
血はつながっていないながらも、近親憎悪のような、撞着した関係。

一方、染谷演じる二階堂的ゆるキャラのもつ味わいも、漫画ならではのもの。
彼が出てくるだけで少し笑えるほっとするシーンになっていました。

漫画って、こんなに「深い」ものだったっけ・・・?
あらためて原作を読んでみたくなります。

遠い昔、学生時代までは少女漫画をよく読んでいましたが、社会に出てからはほとんど読まず、サブカル漫画をたまに読む程度。
出産後はぱたりとそれも読まなくなった。
長いこと漫画的世界から離れていたのだけれど、映画「ハチミツとクローバー」を観て、ぐっと心をわしづかみにされました。
原作を読みたいなぁと思いつつも、買ってまで・・・と思い、漫画図書館などで少しずつ読んだりしていました。
昔好きだった少女漫画と変わらずせつない思いを丁寧に描きつつ、でも確実に進化をとげている。パッと見のかわいらしいポップな印象と裏腹に、内面に深く切り込んでいる。
それは本作も同じ。
やっぱり、漫画っていいなぁ・・・と思わせてくれる。

本作の評価は「☆4.5」くらいなのだけれど、前・後編ということで、少し辛めに4つにしておきました。
後編観る前に漫画を読むべきかどうか、迷うところですが・・・

詳細評価

物語
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