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エボリ

エボリ

CRISTO SI E FERMATO A EBOLI/CHRIST STOPPED AT EBOLI

151

bakeneko

5.0

ネタバレ“わかりあう”ということ

1930年代のイタリアの寒村を舞台にした実際の手記を元に、流刑政治犯と村人とのふれあいを、社会性を盛り込みつつも、静かな情感を積み重ねて見せてくれる“人間&社会ドラマ”の秀作であります。 まず、物語の舞台は“エボリ”ではありません、南イタリアのガリアーノであります。つまり、聖書の記述:“キリストはエボリに留まれり”に由来していて、“=神でさえも田舎過ぎて手前で引き返した土地”における滞在記の映画化なのであります。 (脱線=“地名ミス題名”と言えば、ハイデルベルグが舞台の「ベルリン忠臣蔵」、もはやエジプトとは遠くはなれた「ハムナプトラ3」等がありますよね)。 後期ビスコンテイ映画の名カメラマン、パスカリーノ・デ・サンティスによる田舎の風景は“寒々しい程の貧しさ”を映し出しています。そしてその中で“次第に打ち解けて行く人々の心の動き”が、“冬の寒さの中の仄かな灯り”の様な暖かさをみせて、“人間の絆の原点”について考えさせてくれます。そして、終始地味な佇まいを見せる田舎村が、次第に愛おしくなってくる過程を主人公と観客は一緒に体験するのであります。 役者の力も大切な本作は、圧倒的な上手さをみせるイレーネ・パパスだけでも元は取れますが、主演のジャン・マリア・ヴォロンテ、脇のレア・マッセリ、アラン・キュニーらの抑えた演技も素晴らしいものがあり、ピエロ・ピッチオーニのセンチメンタルな曲も心地よい余韻を残してくれます。 この時期が最盛期のフランチェスコ・ロージの“自然体の演出”も、寡黙な作品の物語の流れを端正に仕上げています。 ドンパチはないので、娯楽嗜好の方には向きませんが、オルミの「木靴の樹」の様な“内面的なドラマ”を愛好する方にお薦めの“渋い秀作”であります。

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