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エル・スール

kih********

3.0

“起承”だけで、“転結”がない。不親切。

 一人っ子の少女が、尊敬する父の「秘密」に感づく。少女の成長と共に、どうやらそれが父の若い頃の女性関係であったらしいこと、それは大人の秘密であるらしいことまで分かってくる。父母の関係よりも父娘関係に亀裂が生じてしまう。そして、父は自殺する。  成人した娘は、父の実家である南(エル・スール)に希望を見出そうと旅に出る。そこでプツンと暗転してこの映画は終わる。―― それはないだろう。  この映画(構想 or 計画)は3時間の長尺だったらしい。だから、今見た作品はここで終わりではない。暗転は “休憩” の予定だったのだ。ところが、後半の公開はないのだという。―― それはないだろう。十分こちらの集中力を引っ張っておいて、これで終わりですって? 後半はご自由に想像してくれ、ですって?  映画通の皆さんのレビューでは、これはこれで十分見るべきものがある、感動ものだ、と仰るのだけど、それはないだろう。起承転結という構成でいうと、見事な ‘起・承’ の展開だ。見る者を ‘転・結’ に前のめりにさせておいて、それが無いのだそうだ。  おそらく、父の秘密というのは、娘にも言うに言えない内容なのだ。勝手に想像すれば、―― スペインの内乱における市民同士、それは親子・兄弟にあっても、若い男女間にあっても、想定外のドラマがおこるものだ。政治的な主義主張の議論と男女関係の心情が必ずしも一致しない。そこに起こる悲劇(それは裏切りであったり、犠牲であったり)。内戦は同じ国民・市民の間に、修復できない分断を起こす。―― これが、北部と南部に色分けされた(これは、‘承’ の段階で、おしゃべり婆さんの話から分かる)。そういう状況の中で、父が秘めた事情は何だったか。それも、‘承’ の段階で、ある女性から父への手紙にほのめかしてある。父にはズシンと来ることだが、この娘や映画観客には分からない。それが、南(エルスール)に行けば分かるのだ。  更に勝手に想像すれば、―― 後半の ‘転’ の段階で、南(エルスール)で、娘は秘密の核心を知り、……、それでは娘が父をどう理解するか、再び尊敬に至るかどうかという ‘結 ’ に至る。―― ‘結’ はどうでもいい、‘転’ の部分を見せて欲しかったなぁ。

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