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雨鱒の川 (2003)

監督
磯村一路
  • みたいムービー 59
  • みたログ 455

2.71 / 評価:161件

どの子供にも大人にも邪気がなくて魅力的♪

  • ハイジ さん
  • 2011年12月3日 23時02分
  • 閲覧数 1889
  • 役立ち度 21
    • 総合評価
    • ★★★★★

邦画が観れるアジアのサイトで見つけ、釣り好きの(実質)主役が須賀健太くんだった為、『釣りキチ三平』だと思って鑑賞していました(←アホでしょ~)。表記は英語だけど、画像の題名が中国語や韓国語だったりするので。

2回ほど泣かされましたが、終盤の駆け落ちを妨害されるクライマックスが今一つ。筏で逃げるところで終わってくれたら満点でした。でも心平が人として、男として、きちんと方を付ける姿も描いておきたかったのでしょう。しきりに「あー・・ばー・・」を繰り返す小百合は「雨鱒」と言っていたのですよね。嬉しそうに川を覗き込んでいた少女時代の小百合に耳(心)を澄ませていれば聞こえてきます。家業を継ぐ英蔵と結婚してくれと願う父に、一人娘の小百合が“私たちは雨鱒なの”、迎えに来てくれた心平とお嫁さんの私は雨鱒だから引き離さないで、と訴えていたのですね。そんな小百合の切実な想いが、父親ではなく、子供の頃から彼女に恋焦がれていた英蔵(お婿さん)に伝わります。ずっと心平にライバル意識を抱いていた英蔵、彼も純粋で心優しい少年でした。絵の才能に恵まれた心平と英蔵がお互いの作品を素直に認め合う清さには、『ピアノの森』の友情に匹敵するものがあります。大人になった英蔵が心平に突き付けた本音、こんなに一途な英蔵に真っ直ぐ謝る小百合、「英ちゃん、有難う」とお礼を述べる心平。
そんなこんなでラストに二人が辿り着いた場所は、・・・へ?でした。山田洋次監督の『息子』みたいな、仲睦まじく暮らす二人のその後を期待していたのですが、本作のエンディングは文芸的。二人は川を下る雨鱒なのです。

私が涙したのは電話の場面。子供の頃から大木に耳を当てて、心の声で会話をしていた心平と小百合。耳が聞こえないのに、喋れないのに、電話をかけた小百合の切なさにまず号泣。受話器の向こうにじっと耳を傾ける心平にまた落涙。二人はちゃんと繋がっていました。
私は福祉大学へ通っていたので、聾唖の学友が電話をかける際には仲介を頼まれたりしていました。その段取りや遣り取りを知っているだけに、小百合が自分で一人で電話をかけて、話したい相手に通じた、という構図が神の奇跡のように思えて、涙が止まりませんでした。全盲の学友もいて、毎日 昼食時には彼女の腕を支えながら、棚に並んだサンドイッチやおにぎりの種類を端から端まで伝えていったものです。親しかったので主観も交えて「美味しそう」だとか「へちゃげてる」とか「売り切れそう、あと1個!」とか、私は今日はこれにするけど、なんて余計な説明までしていましたね。
心平と小百合はいつも一緒に遊んでいた幼馴染み。小百合の言葉が心平にだけ理解できるのも不思議なことではありません。友達になった雨鱒とお話をして、一日の終わりには泳ぎ去る川魚に仲良く手を振っていた二人。長年連れ添った老夫婦が「おい」や「なぁ」で通じたりしますが、心平たちもこれに近いですね。小百合が幸せになれる最高の相手は、彼女の心が聞こえる心平。新婚生活が始まって、小百合が心平に電話で頼んだ食材を見事に買い当てて帰宅したら、拍手ものですよね(って、それは無理かな)。

もう一つの感動は、心平が電話の直後に描いた壁の絵。絵画好きなら経験があると思いますが、筆が全く進まず、一日中 キャンバスの前に座っている、空虚の中で波を待っているあの感じ。心平のコラージュが映し出された瞬間、その圧倒的な表現力と絵心に胸を打たれ、また涙が零れました。彼の想いがザッブーーーン!!!と溢れ滾っていて、痛いほど気持ちが伝わってきたのです。

私のような後悔はさせたくない、という小百合の祖母(星由里子さん)の演技も印象的でした。主役の玉木宏さんは髪型を子役に似せて、少しボーッとした性格まで巧く醸し出しています。志田未来ちゃんは笑い声が愛らしく、須賀健太くんは雨鱒の背に跨った夢の中で輝いていました。それと体育授業のリレーには笑いましたね。私もちょっとそういうところのある子供だったので懐古しました。『歩いても 歩いても』では、自分を救う為に命を落とした恩人の家族に申し訳が立たない、という人物を庇う役柄の阿部寛さんが、本作では、お線香を上げに来る立場を演じています。心配して声をかけてくれる人たちの親切を断って、おぼつかない足取りで出て行く心平の母(中谷美紀さん)は、『嫌われ松子の一生』を思い出させます。

前半、いきなり大人になって、えっ!また子供?というビックリ切り替えがありましたが、全体的には映像も音楽も美しく、心地好い映画です。小説はもっと繊細で心揺さぶる内容だというのが容易に想像つきますね。原作も読んでみたくなりました。

詳細評価

物語
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