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アドルフの画集

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2.0

制作姿勢に疑問

主人公は架空の人物「MAX」。これが原題。そして極めて大きな歴史的転換点に関わっている・・・・がこの物語は全て架空の物語。 ひとりの画家志望の青年が、現実に存在した20世紀の怪物に生まれ変わる、大きなターニングポイントのカギを架空の人物の架空の物語に任せている点、歴史認識から逃げをうっている制作姿勢が見える。 歴史の真実を推理し想像し創作したのではなく、架空の物語にしてしまうことは、多くの犠牲を払った大戦を直視する西欧の映画人の姿勢としては賛同できない。疑問がある。 なにもドキュメントにする必要はないが、せめて「MAX」は実在の人物であるべきだと思う。 不遇にも画家への道を断念せざるを得なかった、そのうえ陸軍組織維持勢力に利用されたような人として、やや同情の余地があるヒトラーを描くことに、西欧の批判が免れない事情もあったのだろうか。 かなり興ざめな鑑賞感が残った。 しかし、富裕なユダヤ人に対する戦争敗戦国民としての多くのドイツ人の不満を、縮小を拒む陸軍軍部が利用したというのは、事実だろうか。この視点は興味深かったが、なにせ架空の物語なので。 富裕なユダヤ人と貧しい多くのドイツ国民という構図が、現在の多くの豊かな西欧諸国と貧困にあえぐそれ以外の国々という現実と似通って、さらに、イスラム国の台頭がナチスの台頭に重なって、現実の危うさが感じられた。 イスラエル(ユダヤ)は豊かな国で、パレスチナの貧困にあえぐ人たちと強力な軍備で対峙しているが、これも本当はどうなのか。 日本の児童の16%は食事も十分にとれない貧困状態にある、一方でどんどん廃棄される食品をよこに、消費をあおるような企業活動・・・。 かなりどこかが壊れ始めている現実への警鐘としての価値はあったようです。

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