美しい夏キリシマ
あらすじ・解説
解説:allcinema(外部リンク)
作品レビュー(12件)
- oce********
4.0点
終戦間近、宮崎県にある霧島の麓の村の出来事。 病気の学生や、片足を失った負傷兵。 滞在する兵士と、夫を亡くした妻との会合。 起こる出来事は日常のようだが、時代は戦時中。 だから今では非日常の部分を見せられていると気づく。 役者は皆印象に残るが、香川照之の兵士役が似合いすぎてておかしい。 一応戦争映画ではある。 何よりも終戦を知った際のそれぞれの行動が興味深い。 戦争は不毛であると端的に伝わってくるが、それとは反面霧島の美しさは変わらないのだ。
- yab********
4.0点
黒木和雄監督といえば、僕の中では大学生の時観たATG映画の「祭りの準備」のイメージが強い。高知の海辺の町で閉鎖的な青春をおくる若者の苦悩とそこからの別離を描いた作品だ。作品自体はATG映画にありがちな、人間の底に流れる暗い情念のようなものが強調されている。 そんなイメージでこの終戦時の南九州霧島地方の人々の暮しを描いた「美しい夏キリシマ」を観た。石田ゆりの香川照之との濡れ場シーンに当時の情念を一瞬思い出した。行き場のない悲しき情欲になつかしさを感じた。 しかし、黒木監督の情念はもっと深かった。瑣末的な情念ではなかった。それを僕は知らなかった。 「学徒動員先の工場で米軍機の攻撃を受け、怖さのあまり瀕死の学友を助けもせずに逃げた。恥ずかしさと後ろめたさは今も消えない」。終戦記念日の前日(8月14日)の朝日新聞の「ひと」欄で彼はこう言っていた。その日偶然にも僕はこの作品を観た。 彼の戦争体験などどうでもよい。彼のトラウマにもさして興味がない。興味深いのは、こんな空襲のないのどかな風景の場所でも、戦争に対する暗い情念が浸透していることだ。美しい風景とそこに暮らす人々の心の闇。心の闇が深ければ深いほど、より風景は美しい。そこがいじらしい。人々の気持ちなどそ知らぬふりで風景はあまりにも美しい。この作品の見どころはこのあたりまえのコントラストにある。 こんなにも美しい風景を描きながら、実は戦争映画なのだという錯覚。この作品に登場する穴を掘って竹槍で人を威嚇する少年は、すでに戦争の当事者なのだ。特攻隊でだめなら最後は竹槍だ、という終戦間近で敗色濃厚の日本のプアーなポリシーが、このひとりの少年の心まで支配してしまう怖さ。少年の父親が、軍隊的思想を少年に、言葉と身体的な暴力により植えつけるその瞬間にも、少年は他人との実体験から立派に戦争の申し子になっている。それが当時の否定しがたい現実なのかもしれない。この作品はまぎれもない戦争映画なのだ。 黒木監督はさらに続ける。「生かされているならば、映画人のはしくれとして、伝えなくては」。 そう、この作品の登場人物はみな生きているという感覚よりも、生かされているという感覚が強い。お国のために死んでいく人を尻目に、みな生かされていると思っているのだ。 竹槍を持って暴れる少年の行動には、生かされていることに対する焦燥感と、生きていることに対する罪悪感の微妙な心の動揺を感じざるをえない。僕はこの少年の行動を見て、終戦とは戦争という行為の終結であり、それを体験した人々の心の終結ではないのだ、と改めて痛感した。
- kch********
5.0点
ネタバレ出口なし、の恐怖
このレビューにはネタバレが含まれています。 - kan********
4.0点
黒木和雄監督の戦争レクイエム3部作の2作目らしい。(知らなかった) 1作目は1988年の『TOMORROW 明日』で、本作は2作目になる。 本作の2年後に3作目の『父と暮らせば』を制作している。 1作目は制作が1988年とかなり前だが、ある田舎の映画祭で観た記憶がある。(その映画祭は既に無いですけどね) 原爆投下前の広島に住む人らの日常を描いた作品である。(佐野史郎を初めて観た) ラストでの閃光が何とも記憶に残っている。 本作は原爆直後?から終戦までの期間の話しである。 舞台は九州の宮崎・鹿児島にまたがる霧島と言われる集落である。(火山活動が活発で温泉なども多々ある) 親友を空爆で亡くし失意のまま故郷に帰って来た少年が主役で、その周りの大人などの悲喜劇もまじえ上手く演出している。 飽きさせないとこは流石である。 芸達者が上手い演技を披露しまくりである。 黒木監督作の常連である原田芳雄、脇役やらせたら日本一?の香川照之、艶っぽい演技がたまらない石田えり、コミカルもシリアスも何でもこなす寺島進などである。 若手では主役の柄本佑が、役にぴったりの演技を見せている。(素かもしれない) 今や脇役で欠かせない注目の若手である。 小田エリカは初めて見たが、可愛らしく芯の強い女性を好演してます。 そして・・平岩紙が良いですね。 最近は完全にはまってます。(^^;) 黒木監督の最後の2本である『父と暮らせば』と『紙屋悦子の青春』では少人数での舞台劇的な演出であった。 映画らしい演出では、本作がラストの作品になる。 驚くような演出はありませんが、良作だと思います。
- ジンタ
5.0点
いかにも悲惨とか、直接的なモノが多い戦争作品の中で、 あまり目にしない視点から戦争の悲劇が描かれていると思います。 一見、映画としては地味な題材と思うかもしれないですが、 絶対に見落としてはいけない映画だと思います。 戦争と青春 ココロが揺ら揺ら、揺ら揺ら
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