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みなさん、さようなら
2004年4月24日公開

みなさん、さようなら

LES INVASIONS BARBARES/THE BARBARIAN INVASIONS/INVASION OF THE BARBARIANS

992004年4月24日公開

一人旅

3.0

それではみなさん、さようなら…

第76回アカデミー賞外国語映画賞。 ドゥニ・アルカン監督作。 カナダを舞台に、死を目前にした男と家族・友人の最期の交流を描いたヒューマンドラマ。 『マイ・ライフ』(1993)『約束 ラ・プロミッセ』(1999)『海辺の家』(2001)など人生の終末を描いた名作は数多いですが、本作も同様に不治の病に冒され余命幾ばくもない男の最期のひと時を、家族や友人との交流を中心に描いています。死を目前にした男の最期を描くというとシリアスで重い内容を想像しがちですが、本作の場合過度に感傷的ではありませんし、比較的コメディタッチな雰囲気が続くので変に構えて観る必要はありません。 まず第一に、今回死にゆく男は超絶倫ビッグダディです。病室には別居中の妻だけでなく、何人かの愛人まで人目をはばからず顔を見せに来ます。それどころか妻や愛人、友人を交えて談笑したり、別荘で最期の一夜をみんなで過ごしたりします。一般的な夫婦関係とは異なり、離婚はしていないが別居中&夫の愛人を妻が受け入れている、という特異な関係性であるため感情移入はしにくいですが、物語の核となる“死にゆく父と息子の親子関係の修復”は人生の終末映画らしい感動があります。父と息子は長年疎遠状態にありましたが、父の死が近づいている知らせを聞いた息子はロンドンから父のいるカナダの病院へ急行します。病院で久しぶりに再会してもろくに会話も交わさなかった父と息子が、同じ時間を共有する中で少しずつ親子本来の愛情を取り戻していくさまは感動的です。 親子の愛情の回復と夫婦愛・友情がテーマの小品ですが、死生観さらにはQOLと安楽死(尊厳死)にも切り込んだ作劇がユーモラスな作風の中に一考の余地を与えています。ただし、本作では死に対する恐怖は描かれても安楽死に対する本人及び周囲の人間の苦悩・葛藤はほぼありません。さらっと当然のように“みなさん、さようなら”しますが、これはこれで一つの描き方です。同じくアカデミー賞外国語映画賞を受賞し、安楽死の是非に更にもう一歩踏み込んだ『海を飛ぶ夢』(2004)と併せて観るのも良いかもしれません。

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