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村の写真集
2005年4月23日公開

村の写真集

1112005年4月23日公開

sei********

3.0

テーマは良いのだが・・。

 監督は良いテーマに着手された。上海国際映画祭で最優秀作品賞と最優秀男優賞を受賞したのもうなづける。言い方は悪いが、日本特有の渓谷や山村の生活描写と、藤竜也氏扮する背広にリュック姿の写真屋も味がある。それらが審査員にウケたかもしれない。(余談1)  ただ、いまどきこんなまとめ方で済ませて良かったのだろうか? というのも、舞台となった徳島といえばダム問題で揺れた木頭村がある。ダム建設をすれば村全体がダム湖に沈む、木頭村は長らく建設反対派村長をたてて国と県を相手に闘ってきた。木頭村には私の知人がいる。そして私の身内には土建屋もいる。つまり、私は開発する側とされる側の気持ちを知っている人間(余談2)なので、こんな牧歌的描写だけで勝負されると、なんだか浮世離れしているような印象を持ってしまう。(余談3)  もっとも、日本映画界の現状や徳島県との絡み、そして監督の地位を考えたら、ドロドロとした利害関係は割愛し、無難に美しい山村描写と家族の確執と結束に焦点を絞らざるを得ないだろう。とすれば、2時間弱では長すぎる。90分程度にまとめられたのではないか。  三原光尋監督作品で私が印象に残っているのは、1990年頃に発表した「栄養成分表示」である。大阪の藤井寺あたりを舞台に女子高生を主人公にした初々しい物語だった。残念ながらヤフー映画サイトのデーターには載っていない。 (余談1)映画の舞台となった山村の風景は、私の郷里にそっくりである。映画の舞台は徳島だが、私のところは高知の物部川流域なので文化的にも近い。 藤竜也氏のキャラも昔気質の写真館のオヤジという感じが出て良い。あそこまでステレオタイプに昔気質を演出するのなら、背負うリュックも大型のキスリング(昔の登山家やカニ族が背負う横幅の広い帆布のリュック)にすればインパクトがあった。 (余談2)話せば長くなるが、ダム建設は必ずしも治水や発電の「必要に迫られて」つくるわけではない。むしろ第一の目的は土建屋を食わすためである。土建業界には様々な関連業者が裾野広く結びついているので、単なる一業者の利権ではなく地域経済にとって死活問題でもある。だから土建屋と建設推進の政治家は必死である。そのためまず建設ありきだから、ダムによる治水効果や発電などの見積もりは数字合わせのデタラメが多い。  しかし食うために村一つ潰すことを今後も続けていけるほど国土は広くない。それにダムの耐用年数は半世紀から一世紀、泥がたまるので決壊すれば被害が倍増される欠点もある。村や山河を潰してまで建設する魅力は年々褪色している。  事は「環境保護VS経済と生活」=「綺麗事VS現実」という単純な図式ではない。 (余談3)ダム建設に反対する村民と建設推進の土建業者と県と対立、各々の生活をかけたぶつかり合い、綺麗事の口先だけの現場を知らない推進派の中央官僚と反対派の都会の環境保護運動家、これらの素材をまとめたら確実に欧米で絶賛される映画になる。  井筒監督がやったら面白いだろう。持ち前のアクの強さと独裁体制で在日コリアンという日本映画界でタブーの素材に挑戦できたのだから、これにも挑戦してほしいなぁ。

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