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キッチン・ストーリー
2004年5月22日公開

キッチン・ストーリー

SALMER FRA KJOKKENET/KITCHEN STORIES

952004年5月22日公開

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4.0

人が持つ穏やかな心を育てる作品

 鑑賞後にホッと心が温まるような、北欧らしさが存分に発揮されている作品だ。  ノルウェーの田舎を舞台として、スウェーデンから台所行動学の研究にやってきた男と、実験のモデルとなった住人の心のふれあいをぎこちなく、それでも暖かく描いている。  これはもう、北欧の舞台と監督の手腕にやられた。男2人の本当にぎこちない交流、起伏の一切ないストーリー、それでもひとつひとつのシーンが鮮明に心に残る。  序盤の早い段階で、監督の作り出したかった世界に観る者を連れて行ってしまう。でなければ、男2人が会話もせずただただ相手の顔色を伺っているだけのシーンに魅力を感じるはずがない。ベント・ハーメル 監督は自らのアイデアと、北欧の安らぎある舞台を利用して、時の流れを遅くすることに成功し、細かいところまで深く見入ってしまうように視聴者を導いた。  最後に、家の住人が静かにこの世を去り行く場面も、切なさの中に優しさを感じてしまう。映像でもそれは感じられ、霊柩車を玄関に止めて、本来ならば悲しみしか感じない場面も、玄関を少し開けて、そこから漏れる部屋の明かりにとてつもない温もりを感じる。外が雪で覆われていることも、その明かりをよりいっそう引きたたせる。  何気ないところに、美しさや優しさを感じる。そういった心は、これからも生きていく上で大事にしていきたい。以前に、ストレス社会と騒がれた日本。それは今でも変わらない。社会を改善していくヒントは、この作品にも隠されているのかもしれない。

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