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キッチン・ストーリー
2004年5月22日公開

キッチン・ストーリー

SALMER FRA KJOKKENET/KITCHEN STORIES

952004年5月22日公開

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5.0

善き人のための、台所のソナタ

『善き人のためのソナタ』というのがあった。東西冷戦下のドイツにおける監視社会が舞台だった。映画の基本構図はこれと同じだ。監視(調査)人が被監視(被観察)人に感化されてしまう。  敵対人(他人)への監視(調査)が、関心へと変わり、共感・理解へと深まり、ついには自分の任務を放棄し友人となる。監視は無言のまま(調査は殆んど会話がないまま)、理解と友情を生み出す。『善き人…』の場合は『ソナタ』だった。こちらの台所にはピアノがない。ソナタに当たるものは何だったのだろう。  北欧の緩やかなテンポ、季節のリズム、老いが醸し出す静かなテーマ、隣人とのハーモニー、それらがそのまま『ソナタ』になって響いたのだろう。調査員はソナタの聴き手になって共鳴してしまった。  殆んど同じ年齢に近づいて、この静かでどっしりした“台所のソナタ”が私にも心地良く響いてくる。

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