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誰も知らない (2004)

NOBODY KNOWS

監督
是枝裕和
  • みたいムービー 2,054
  • みたログ 6,340

3.96 / 評価:2246件

誰も知らない

  • bar******** さん
  • 2019年3月17日 0時45分
  • 閲覧数 3719
  • 役立ち度 0
    • 総合評価
    • ★★★★★

誰も知らない。昔見たんですが、怖い映画だと思いました。ネグレクトという事実を当時はよく知りませんでした。若いぼくには難しい内容で、なぜそうなってしまったのかよく理解できませんでした。

この映画は大きな問題テーマをはらんでいます。それがネグレクトです。しかし、本当に伝えたかったことは、ネグレクトの注意喚起などではないと思います。是枝監督が伝えたかったのは、そこで精いっぱい生きていく少年たちと、「誰も知らない」というタイトルにもある東京の孤独です。誰も関心を持たないということが、大都会の特徴です。そこにある「密集地帯の孤独」、懸命に生きていく少年たちの寂寥感、その詩情がこの映画のメインテーマだと思います。

もちろんこういった「ネグレクト問題」が非常にショッキングなので、観ている人間は絶対にネグレクトとこの映画を結びつけるようになります。それは当たり前です。しかしそれほど、「ネグレクト問題」は語られてこなかったのです。それは文字通り「誰も知らない」問題なのです。

家庭内の事情というのはアンタッチャブルなものです。なぜなら誰でも一家の大人たちは責任があると考えるからです。そこに介入するのは越権行為だと考える。しかし、それでいながら危険だと思うのは、子供を社会の一員というよりも家庭に付属する物として捉えている現代の社会風土です。極端な言い方をすれば大人の所有物である。「子供は大人が責任をもって育てるもの」という社会通念と、都市化と関係の希薄化がいま非常に危険な状態を作っていると思います。インターネットができて、隣人との関係が薄れてしまっている昨今では、苦しみを覚える子供たちが、無防備なままに晒されやすくなっています。最近ようやく虐待問題やネグレクト問題に光明があてられ、「子供は地域社会で守るもの」という認識が出てきました。それは核家族が増え、孤独な老人が増えたこととも関係があります。昔は若い夫婦が育児を一手に担うことはなく、祖父母と両親の二重体制で養育されるのが普通だった。密接な地域ネットワークがあり、意識しなくても相互に管理配慮されている状態が形成されていた。しかしその紐帯はなくなってしまったのです。その最大の犠牲者が子供であり、次の犠牲者が親なのです。理想的な「親」というイメージがもっぱら独り歩きしていますが、それは前時代的なイメージでありもはや実情を伴っていないと考えます。核家族において十分な育児と家事がどれほど大変か多くの人は理解していないと思います。また共働き家庭が増え、家庭内の役割は自由になりました。しかしそれは同時に家庭内の規範が振り直されたことをも意味します。いま若い夫婦はかつてない試練にさらされています。昔から培われてきた教育環境モデルが失われ、育児者である両親の教養と発想に委ねられることになりました。せいぜい2~30年生きただけの人間にそんなことは不可能です。心が優しい方は成功するでしょう。しかし平均的な方は心が折れるに違いありません。善悪のわきまえがない人間は、虐待やネグレクトに走ります。その時に周りの人間が「親として失格だ」などともぐもぐ言っているのは間違いなのです。なぜそうなったのかを理解しなくてはならず、それを考察した人間なら、「地域社会で子供を守らねばならない。そして事が起こる前によく観察しなくてはならない。家庭内の事情は家庭で解決されるべきだなどと思わずに」という考えに達するはずです。

ようやくその考えが現れてきました。社会が少しずつ成熟してきたのでしょう。思えばこれほどまでに急速に様々なものが変化を被った時代はありませんでした。私たちは新しく現れた高度な機械世界や急速な都市化に、対応できなくなっています。その証拠がこの「誰も知らない」であり、多くの共感者を呼んだということです。この映画の持つリアリティを疑う人間はいません。これはまさに現在も起こっていることであり、その注意喚起でもあるのです(最初に申し上げた通り、作品のメインテーマはそこではないと思いますが)。

作品は詩的です。それが先ほど申し上げた「都市の密集地帯の中の孤独」です。また同時に「子供たちの世界」を描く努力もしています。ただしかし、育児放棄という重たい問題があるせいか、描かれる絵もほぼすべて重苦しく、前述の詩がところどころ完全につぶれてしまっていて、ラストのシークエンスだけ輝きを保っています。それは主人公である明の心象を、はじめて「育児放棄」という重たさから離れて描いたからです。夜から夜明けに移り、また強い日差しが戻ってくる。その中で彼は何を見たのでしょうか。憎しみではないかもしれません。ただ懸命に生きる。それだけを思っていたのかもしれません……。

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

イメージワード

  • 絶望的
  • 切ない
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