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誰も知らない (2004)

NOBODY KNOWS

監督
是枝裕和
  • みたいムービー 2,050
  • みたログ 6,297

3.96 / 評価:2199件

現代版『火垂るの墓』

  • K さん
  • 2006年1月3日 18時20分
  • 閲覧数 8309
  • 役立ち度 139
    • 総合評価
    • ★★★★★

秀逸な映画だ。4人の子ども達が織り成す自然な演技は本当に素晴らしい。特に主演明役(柳楽優弥)の演技は、カンヌ映画祭にて若干14歳にして主演男優賞を受賞しただけある。例えば偶然野球の試合に参加することになった彼の演技に注目してほしい。バッターボックスに立つ前にスウィングのコツを監督に教えてもらった時の、なんとも言えない嬉しさや期待を湛えた表情、チームの一員として大好きな野球をプレイすることのはにかみを押し隠すような表情は、観る者に言葉を越えたメッセージを与える筈だ。

構想自体が優れていることは言うまでもない。2時間半にも及ぶ作品なのに、全く飽きることがなかった。映像に関しても様々な工夫がみられた。こぼれたマニキュアのしみや、茂がベランダに放り投げた土団子、赤いおもちゃのピアノなどに、映像はしばしばリカレント(回帰)し、時間経過を表すとともにどこかセンチメンタルな印象を与える。また印象派チックな音楽は作品全般にわたってユニークな雰囲気を醸し出している。舞台設定自体は極めてシンプルで限られているが、その中にうまく変化と統一感を与えることに成功している。

高畑勲監督『火垂るの墓』が、戦時中に貧困にさらされた子どもたちの苦悩と悲劇を描いているとしたら、『誰も知らない』は現代社会版のそれである。しかし『火垂るの墓』のときには、戦争をその原因として指摘できたが、『誰も知らない』の場合には何を指摘できようか。教養のない奔放な母親か、経済力がない無責任な父親等か、若しくはこのような子どもたちを保護できない福祉行政か。

そもそもこの子どもたちを不幸な者と見なしてしまうこと自体が、軽率な行為だと感じてしまうのは私だけだろうか。野球の一戦を塾のために逃してしまう子どもは、果たして不幸だと言えないだろうか。ここに『誰も知らない』が扱う問題を、映画だけのものとして放置できない所以がある。

4人の子ども達は貧しいが、カップヌードルの鉢植えで育てる植物や、公園で過ごす一ときに喜びを見出すことができる。「勉強をしたい」と願う向上心を持っている。高度に複雑化した社会において、何が正しく、何が幸せで、何が豊かなのか、この定義は実は曖昧である。大人の価値基準では測りきれない子どもの世界を、是枝監督は見事に描ききっている。彼の社会洞察力は作品に深みを添える重要なエッセンスだったに違いない。

詳細評価

物語
配役
演出
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音楽

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  • 切ない
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