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誰も知らない (2004)

NOBODY KNOWS

監督
是枝裕和
  • みたいムービー 2,051
  • みたログ 6,309

3.96 / 評価:2213件

綺麗で穏やかな地獄

  • sib******** さん
  • 2020年9月1日 22時20分
  • 閲覧数 2257
  • 役立ち度 6
    • 総合評価
    • ★★★★★

物語の内容が濃いわけではない。
淡々と残された子供の生活の質が下がっていくのをただ見守る映画。
大人の介入もない。じんわりじんわりずっと苦しい。救いもない。
ガスも電気も水道も止められて、公園で水を汲み、服を洗ってる姿も、野球をしたい明が汚れたボールを見つけて木の棒で楽しそうに遊ぶ姿も、薬を万引きする姿も、学生服を羨ましそうに見つめる姿も、全部綺麗に見えてしまう。
映画全体の映像はとても綺麗で、子供は輝いて見える。
尾を引く鬱映画です。

冒頭、大事そうにスーツケースに手を置いて撫でるような少年の仕草が目につく。
それがなんだったのか、映画の終盤で理解した。
引越しの日スーツケースをちょっと撫でる仕草と同じ。

母親は子供達を愛しているように感じた。
朝、目覚める前涙を流す母親を明がじっと見つめるシーンがじんわり胸にくる。ただあの母親は4人も子供を抱えられるほどの人間ではなかったんだろう。悲しい。
ベランダで好きな人の話をして、京子にピアノを買ってあげるなど夢を語る母親の話を聞く明は、その夢は叶えられないと知ってるように見えた。切ない。

クリスマスに帰ってくると言った母は結局帰ってこず、正月。明が弟妹のためにお年玉をコンビニのお姉さんにお願いして見繕う姿が愛しい。母親からと言ってお年玉を渡す。その後、京子だけは母親の字の違い気づき、それを生活費の足しに明へ差し出す。切ない。

帰らない母親を迎えにいくと言うゆきが明と2人で出掛けた際に、モノレールを見て明が、羽田行きのモノレールだと言っていつか飛行機を見に行こうと誘うシーン。
そのシーン前で母親に、電車に乗って羽田空港で働く明の父親に会いに行った話を覚えてないと言っていたのを思い返して切なくなった。

終盤、ゆきが椅子から落ちて動かなくなる。30円で公衆電話から母親の仕事先に連絡をするも、すぐに30円は尽き切れてしまう。公衆電話に頭を何度もぶつける明を見るのが辛い。

途中仲良くなった女の子がおじさんとカラオケを一緒に歌って作ったお金を明に差し出す。それを明は突っぱねる。お金がなくて大変でも、それでも明は受け取らない。正しくないと思ったからだと思う。明なりの正義感だと思う。
それを映画全体で否定されていくのが辛い。明はもう死んでしまっているゆきに飛行機を見せに行くと言って女の子からそのお金を受け取る。
スーツケースにゆきを入れるシーンで私は泣いてしまった。死んでしまったゆきを埋めに行くシーン。全てが綺麗に見えた。そこがずるいと思う。
ゆきを埋める行為も埋めるために泥に塗れた姿も、全てが破綻してておかしくて狂ってるのに映像が美しくて、正しく見えてしまうのが最悪だと思った。

鑑賞中は子供達が頑張って子供だけの家族を壊さないようにしているのを見て、大人の介入がなければいいと思っていたけど、観賞後、そんなことより大人の力であの穏やかな地獄をぶっ壊してほしくなった。

これで幕を閉じてしまったから、もうあの部屋は時間が経たないし何も変わらないしずっとあの穏やかな地獄が続くのかと思うと本当に最悪です。

鑑賞は全くオススメしません。ただあの映像の痛々しい美しさを見る価値はあると思います。
美しいのが本当に最悪なんですけどね。

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

イメージワード

  • 泣ける
  • 悲しい
  • ロマンチック
  • 不気味
  • 恐怖
  • 絶望的
  • 切ない
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