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コーヒー&シガレッツ (2003)

COFFEE AND CIGARETTES

監督
ジム・ジャームッシュ
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3.04 / 評価:450件

コーヒーとタバコのジェネレーション

  • dan******** さん
  • 2010年5月3日 23時20分
  • 閲覧数 491
  • 役立ち度 7
    • 総合評価
    • ★★★★★

20年以上吸い続けているセブンスター。
この10月でついに440円にまで値上げされるそうだ。

1時は1箱1,000円ぐらいでいいんじゃないか的な議論まであったりしたし、500円くらいは覚悟していたので、なんともはや中途半端に安心したりしている。


90年代中盤にアメリカにしばらく住んでいた頃、凄まじい嫌煙ムーブメントに直面し、あまりのタバコの高さ(当時で日本円で500円くらい)にも驚きもして、こんな風に日本がなったらたまったものではないと思いつつも、いつかこうなるんじゃないかとぼんやりと考えていた。

日本に帰ってくると、オフィスの自分の机には大きなガラスのマイ灰皿を一番書類が崩れそうにないところに鎮座させて、20本でも30本でもタバコを吸い、缶コーヒーをひたすらがぶ飲みしながら仕事をしていた。
自分のワープロ、OASYSはヤニで汚れた黄色になっていたのを思い出す。あの当時のオフィスって、どこもタバコのヤニで壁面は黄色くすんでいたのだから、それも別に普通のことだった。

机の上に、持ち運びが出来るワープロではなくて、DOS-Vのパソコンがおかれ、それからすぐにwindowsがインストールされてきて、そこから情勢は変わった。

ユニマットのオフィスレンタルのコーヒーを、缶に30円善意のしるしとして入れれば飲めるようになったのだが、灰皿はこのあたりでデスクから撤去された。
タバコを吸うための分煙エリアが出来て、そこに大きなテーブルがおかれた。自分はそこに書類を持ち込み、ほとんどの仕事をするようになる。デスクに戻るのは電話とまだ慣れないPCを使うときのみ。

やがて、オフィスのレイアウト変更を異動シーズン毎に行ううちに、このテーブルはだんだん端に追いつめられていき、そして最後には屋外に出された。
非常階段のスペースにおかれた、コタツの伝熱網みたいな赤い缶の灰皿とともに、雨の日も風の日も過ごしたものだった。そして、自分は初めて転職することになる。

転職した先の会社のオフィスビルの一階はスターバックスだった。
アメリカにいた頃には、ニューヨークの1ブロックに1軒ずつあるくらいの勢いで増えていたあのスターバックスだ。もちろん禁煙。

コーヒーは、ヴェトナムのロブスタ豆のおかげで安くなったし、スターバックスみたいにやたらと高品質なアラビカ豆で高いコーヒーをセルフで売る店も増えた。今ではマクドナルドのコーヒーがあれだけの味で100円の時代となった。一方、街中の喫茶店は次々と消えていき、薄くてがぶ飲みできるアメリカンタイプのコーヒーも追われていった。


コーヒーとタバコの世代は、今の時代と折り合わない。
カフェでタバコは許されない時代が近づいてきているなかで、滑稽で間抜けな反社会的存在となりつつあるのだ。

古き良き時代、彼女とデートするとき待ち合わせの場所、男の足元にはタバコの吸い殻があったし、大学の友達と喫茶店たむろするときは、アメリカンのコーヒーを飲みながら灰皿に大量の吸い殻をピラミッドのように重ねていく。


この映画はコーヒーとタバコをテーマにした映画だから、その滑稽な社会からの落ちこぼれぶりを皆なんとなく共有している。

言葉にすればなんてことはない、説明するにはたわいがない、そんなシーンが連続するこの映画に、間の抜けた反社会的行為である喫煙やコーヒーというちょっとした害毒が良く似合う。そういう人生のつまらない出来事が、むしろ面白いのだ。
それを理解すれば、謎めいて出てくる台詞「地球はひとつの共鳴伝道体だ」の意味もわかろうというものだ。
人生はひとつのコントであって、それを皆共有しているのだ。この認識において実存主義者は圧倒的に正しい。

映画は、最近の新作「リミッツ・オブ・コントロール」の中のセリフ「想像力とスキルを使え」というよびかけにこたえる必要があるものだ。ちょっとした間、テンポ、見逃してしまうような表情の変化、それをひとつずつ意味にまでならぬところで理解していかねばならない。いかにもジム・ジャームッシュの映画である。



もうすぐ、3スクリーンから1つのスクリーンだけになってしまう渋谷シネマライズの「名画座ライズ」特集にて。

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