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デビルズ・バックボーン
2004年8月28日公開

デビルズ・バックボーン

EL ESPINAZO DEL DIABLO/THE DEVIL'S BACKBONE

1062004年8月28日公開

kkk********

4.0

『あくまのせぼね』

まず邦題、自分だったらこう付けたい。 ちなみに原題は"el espinazo del diablo"。 英タイトルは"the devil's backbone"。 意味はどれも同じ。 なんでもカタカナにすりゃイイという物ではない。 2001年の製作。 『ミミック』を撮り終えたギレルモ・デル・トロが、 スペインのペドロ・アルモドバルに招かれて 撮りあげた作品。 舞台は30年代、内戦下のスペイン。 お約束の「孤児院」。 両親を失い、やって来たカルロスは コミックの大好きな男の子。 ひとつだけ空いていた、「12番」のベッド。 そこには昔、サンティという子がいたのだと言う。 ある嵐の夜。 雲の向こうから不発弾が降って来たその時。 サンティは、忽然と姿を消してしまったのだ。 「カルロス、僕が見える?」 目を開ければ、そこには。 頭から血の煙を噴きあげ、 髑髏のように透き通った姿のサンティが。 「この場所にはある秘密が隠されてるんだ。  僕と一緒に来て欲しい。  今に、たいへんなことが起こるだろうから・・」 ―ヨーロッパ最恐の”怨霊”ホラー― やっつけなカタカナのタイトルと えーかげんに的外れなコピーから ゾクゾクのオカルトホラーを期待してしまうと モロにハズす。 (配給担当のヒト、ちゃんと中身観たんだろか?) そもそもこの映画、ハッキリ言って ビタ一文怖くない。 デル・トロ印ということでモゾモゾギチギチの 虫とかが出てくるのかというと、それも無い。 この人特有の、 古ぼけた骨董屋さんに迷い込んだような美術や 小道具の尋常じゃないツクリコミの執念は、 この作品においてはむしろ希薄。 それでも。 これがどうしようもなくデル・トロらしさに溢れた、 紛れもないデル・トロの映画だったりする。 戦争に翻弄される、無力な人々。 過酷な現実とファンタジアの間を行き来する 子供達の危うい精神世界。 今でこそ「幽霊のように」現実世界に囚われる 大人達もかつては「子供達」であり、 理想の世界を夢見る存在であったこと。 その諦念と、悔恨の痛み。 もともと世界観の造形には抜群のセンスを 見せる人ではあったけど。 憂鬱で儚い内面を伴ったその空気は 本作において確立されたもの。 そしてそれは、後の『パンズ・ラビリンス』や 製作として携わった『永遠のこどもたち』にも 連なって行く。 「悪魔の背骨」 それは、死んでしまった嬰児の背中に むき出しの醜い背骨を「あしらい」、 ラム酒の瓶に詰め込んだもの。 過酷な現実の中。 「生まれて来てはならなかったもの」と 都合のいい理屈で己の弱さを隠そうとした、 絶望と欺瞞の産物。 「幽霊」も同じ。 過去の悲劇をこの世に映し出すホログラム。 なにも為さず。なにも語らず。 いつか、その場所で、誰かが悲運の死を遂げた。 その事実を無闇に怖れ、 「忌まわしきもの」と覆い隠してはいけない。 それがどれほど醜く、厳しいものであろうと。 事実を認め、乗り越えなくては 僕らの自由は得られない。 少年は気づく。 「もう、オバケなんか怖くないよ。」 同様のテーマながら、 どうしても鬱屈としてしまう『パンズ・ラビリンス』に くらべ、こちらの後味は清々しく心地良い。 宮崎アニメの熱烈な信奉者としても 知られるデル・トロ監督。 『パンズ~』が彼にとっての『千と千尋の神隠し』なら、 さしずめ本作は『ラピュタ』だろう。 傷だらけの体を引きずりながら 孤児院を巣立っていく「おとこのこ」の後姿に エールを送りたくなる。 エンドロールで「きみをのせて」なんか流れたら、 マジ号泣だぞ。

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