真説チャイニーズ・ゴースト・ストーリー
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作品情報上映スケジュールレビュー

作品レビュー(1件)

悲しい16.7%不気味16.7%恐怖16.7%ファンタジー16.7%ロマンチック16.7%

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    3.0

    オリジナルは古典的怪奇譚です

    本作の監督である李翰祥(リー・ハンシャン)は、北京出身の映画監督。抗日戦の影響を受け、大量に香港へ流入した上海映画人のひとりで、戦後(50~70年代)の香港映画界を牽引した北京語閥の筆頭格です。香港映画ファンには、歴史映画(『武則天』や『楊貴妃』)や黄梅調映画(『江山美人』や『梁山伯と祝英台』)、或いはエロス映画(『金瓶梅』)の名匠として知られています。 そんな彼の演出上の特徴は、クラシカルな雰囲気を漂わせるセット撮影にあります。 今日では、中国の張芸謀(チャン・イーモウ)も絢爛豪華な映像美で知られていますが、李翰祥の重点は張芸謀の様な色彩美の追求にはなく、どちらかと言えば、画(カット)の中に収まる全体像を意識してのセット自体の造形美を優先するところにあります。その理由のひとつは、彼が北京国立芸術専門学校で西洋絵画を学んでいたことが挙げられるでしょう(これを生かした遠景のマットペイント撮影は有名)。 もうひとつには、当時(50~70年代)のショウ・ブラザースが優れた美術スタッフを多く抱える映画会社であったと言う事実。そこで頭角を現した李翰祥や胡金銓(キン・フー/本作にも助監督として参加)等の人気監督たちも、そもそもは美術スタッフとして入社しているほどで、これらはハリウッド黄金期への造詣が深い社長のランラン・ショウの志向と無縁ではないでしょう。 但し、こう言った話は私の様な懐古主義者以外にはどうでもいい話で、それよりも多くの香港映画ファンの興味を惹くポイントは、本作『真説チャイニーズ・ゴースト・ストーリー』が、あのツイ・ハーク製作による87年版『チャイニーズ・ゴースト・ストーリー』のオリジナルであると言う事実かもしれません。 両作は、どちらも蒲松齢による「聊斎志異」の中の一篇「聶小倩」を原作としており、原題は双方ともに『倩女幽魂』。(当然ながら)登場人物や大筋もほとんど同じくし、書生・寧采臣(チャオ・レイ/87年版ではレスリー・チャン)と幽女・聶小倩(ベティ・ロー/87年版はジョイ・ウォン)の悲恋を描き、そこに絡む剣豪・燕赤霞(ヤン・チーチン/87年版はウー・マ)の活躍を描きます。 最大の違いは、本作はあくまで古典怪奇小説の映画化作品であり、監督の李翰祥の志向はどこまでも原作が持つ雰囲気の再現を狙っている点にある、と言うこと。この点、ツイ・ハーク主導による87年版が原作の持つこれらの要素を完全に無視して娯楽活劇路線を突っ走っていたことを考えると、両者は同じ物語を語りながら、一方で全く違うオリジナル同士とも言えます。 私の独断に過ぎませんが、今日のエンタメ志向派に歓迎されるのは、間違いなく87年版であると思います。 本作には、87年版が持っていた映画活劇としての面白味は皆無です。 一応、後半には剣戟シーンもあるのですが、それは製作が60年と言うことを考えても推して知るべし、です(香港映画の剣戟アクションが大きく飛躍するのは胡金銓による『大酔侠』登場以降。それ以前は全て観るべきところは少ないと割り切って良いでしょう)。 では、本作の魅力は何か。 それは、冒頭に既に述べていますが、李翰祥が得意とする古典名画を思わせる美術セットの素晴らしさと(この部分については、正直、最近の映画より優れています)、その演出が醸し出す古典的怪奇譚としての味わいです。 最も、クラシカルな映画を見慣れている方や、それを観ることに抵抗のない方でなければ、こう言った本作の魅力を堪能するのは難しいでしょう(良い悪いではなく)。 そもそも、本作に限らず李翰祥の演出は美術志向への傾注が過ぎて物語性に欠けると言う悪癖があります。本作も例外なく物語性と娯楽性に欠けるのだから、これに付き合えない人がいたとしても、それは仕方のないことかもしれません。 また、役者の魅力も正直心許ない。 87年版ではジョイ・ウォンの儚い美しさが際立った哀しき幽女役は、本作のベティ・ローの顔立ちが勝気なせいで、多分、全く受け付けない人もいるでしょう(彼女自身は31歳の若さで自殺するほど繊細な人だったみたいですが)。 レスリー・チャンの頼り無げな魅力が逆に奏功した書生役にしても、チャオ・レイは普通の中年親父みたいな顔立ちなので、セックス・アピールに著しく欠けます。 美術造形を除く全ての面で、本作が、87年版『チャイニーズ・ゴースト・ストーリー』の持つ奔放な魅力に勝るとは思いません。 『倩女幽魂』の世界を未体験の方には、私は、迷わず87年版をお薦めします。 但し、もしもあなたが原作の持つ古典的な雰囲気や、或いは中国伝統の怪奇譚の世界を覗いてみたいと言うのなら。 それは、野暮なツイ・ハークよりも李翰祥の方が上手であることは、断言しておきます。

スタッフ・キャスト

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基本情報


タイトル
真説チャイニーズ・ゴースト・ストーリー

原題
倩女幽魂/ENCHANTING SHADOW

上映時間

製作国
香港

製作年度

公開日
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