考える映画
- cyborg_she_loves_me さん
- 2020年6月4日 2時16分
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- 総合評価
みんな、「小栗旬くんが爆弾テロ犯を演じた映画」っていうのを期待して見るから、こんな低評価になるんですよ。
小栗旬くんがニヤリと不気味な笑いを浮かべながら次々に建物を爆破したり人を殺したりするサイコキラーぶりとか、ドバドバ血を流したり絶叫したりする人で画面があふれかえるとか、そういう映画を期待する人は、お願いですから見ないでください。
1回目の爆破シーンが映像なしの音だけだったり、爆破現場の惨状がほとんど映ってなかったり、海津勇也(小栗旬さん)の不良仲間の波畑克次(姜暢雄さん)が勇也の家族をレイプしたことは、暗示されてるだけで映像は何も映ってなかったり(ぼんやり見てる観客の中には意味がわからなかった人もいると思う)、勇也が克次を殺したシーンが銃声だけの映像なしだったり、……と、普通の映画なら見せ所になるであろうシーンが全部ずっぽりと抜けてるのは、もちろん全部「わざと」です。
そんな、目ばかり刺激して思考停止させるようなシーンは入れないぞ、という意思の表われです。
これは、無差別大量殺人犯でありながら未成年者というだけで4年で少年院から出所できるという法律は、はたして妥当なものなのか、という問題を、リアルなケースとして描くことによって観客に考えてもらおうとした映画です。
この映画は、被害者の遺族である三村刑事(津田寛治さん)と、加害者の家族である海津直輝(内藤剛志さん)とを、ほぼ均等の比重で描くことによって、どちらか一方だけの視点から事件を見ることができないように、周到に工夫されています。
被害者の遺族の心情になって見れば、犯人を殺してやりたいほど憎む心情は、もちろんよくわかる。
だけど、加害者の家族の側の心情になって見れば、勇也は変わったのだ、ちゃんと更生したのだ、心から反省してまっとうな人間になろうとしているのだ、それを認めて欲しい、と言いたい心情も、よくわかる。
どちらの気持ちも痛いほどよくわかるように、この映画は描いています。それがこの映画のいいところだと思います。
この映画の最終的な結末は(って、以下、ネタバレを含みます、これから見てみようと思う方は読まないことをお勧めします)、、、
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この映画の最終的な結末は、結局、犯罪者が完全に更生することなんてありえないんだ、人殺しはどこまでいっても結局は人殺しに終わるしかないんだ、という人間観に基づいて作られています。
この人間観に、私も個人的には共感します。
しかし、もし何百人、何千人、何万人かに1人、本気で自分の犯罪を悔いて、本気で更生しようと決意した人がもしいたとしたら、そういう人の更生の道をふさぐことって、あっていいのかな、という疑問を抱くのも事実です。
でも、その更生の可能性の有無の一線を、未成年者であるかどうかという年齢で引く現在の法律に、疑問を抱くのも事実です。
難しい問題ですね。
そういう、とても難しい問題を、考えながら見る人のための映画です、これは。
考えるための映画です。
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