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カランジル

カランジル

CARANDIRU

145

kak********

4.0

一触即発!定員オーバーのカランジル刑務所

原作は、本作品に登場するボランティア体験で赴任したドラウツィオ医師が、刑務所内で垣間見た人生模様を著した「カランジア駅」だ。当面の課題であるエイズ予防だけでなく、定員オーバーの囚人7000名の健康管理に携わるうちに一部の囚人たちと親しくなり、単なる医療行為に留まらず心の交流にまで発展する。 監督は、「蜘蛛女のキス」を手がけたヘクトール・バベンコ。ウィリアム・ハート主演でゲイが登場する事の多い作品の一つだが、本作品でも、その特徴は遺憾なく発揮している。ブラジル出身の監督によるブラジル映画で原語はポルトガル語になっている。 一見、団地のコミュニティと見間違うかのような和気あいあいした場面があるかと思えば、囚人社会の権力争いから生じる粛清などの狂気も潜んでいたり、そのアンバランスな運命共同体は興味が尽きない。前半は囚人たちの人間描写が何で刑務所に入ったのかを中心に繰り広げられて行く。 しかし、4000人が定員という巨大な刑務所に7000人も収容されていれば、些細な事から事件が起きる可能性は大である。現に、後半は1992年10月20日に実際起きた”カランジル虐殺事件”が織り込まれている。この事件も大きな出来事には違いないが、本作品のテーマはそれだけではない。 塀の中と外の人間模様を対比したとき、本質的なものは変わらないという現実がある。鉄格子の中に入っている悪人もいれば、入っていなくても悪人はいる。罪を犯していても、その動機は考えさせられる場合もあれば、罪に問われなくても人を傷つけている場合もある。人間らしく生きるということは何か考えさせられる。

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