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犬猫
2004年12月4日公開

犬猫

942004年12月4日公開

lem********

3.0

リアルで冷静な状況分析

観終わった瞬間、評価に迷う映画というのがあるけど、この映画は僕にとってまさにそんな一本でした。 ご存じ『人のセックスを笑うな』の監督のデビュー作ですが、映画の骨格となるものは今作と全く一緒だった気がします。特に演出方法に関しては、この監督はずっとこういう作風で行くのだろうなぁ、と思いました。とにかく、井口監督の映画製作に対する哲学みたいなものが、画面からありありと伺えるような気がしました。 「力を抜いて自然に」「いつもと同じように堂々と」そんな演出方法です。 そのお陰あってか、主演の榎本加奈子、藤田陽子の演技は、良い意味で緊張感なく、リラックスした雰囲気で、<素の女の子>をうまい具合に引き出されていました。これは二人の演技が抜群に巧いとかいうことではなく、事前のリハーサルから始まっている演出方法の妙だと思います。 ストーリー的には、ほとんどドラマティックな展開に進まず、まったりと日常を描いているだけの作品なので、人によっては「なんだこれ」という感じを受ける向きもありそうです。かくいう僕も、これほど“何も起こらない”という風には思っていなかったので、終わってみてちょっと肩すかしをくらった感はありました。 だけど、そもそも監督の狙いはそこで、日常にそんなドラマティックなことがポンポン起こるわきゃない、という一種の冷徹な観察力から始まった映画といっても過言ではありません。喧嘩してても、多分、実際はそんなドラマみたいな修羅場にはならない。「ちょっと言い過ぎちゃってるかな……」とか思いながら怒っている。それが実際の喧嘩なんだ、というリアルな状況分析。そこにこそ、観客が自己を投影できるんじゃないか、というスタンスなのです。 この一種のリアリスティックな演出方法に違和感を感じる人には、この映画は良く解らない作品になると思います。 僕はその中間ぐらいで、ちょっと違和感を感じつつも、それほど嫌いでもない、という立場です。 ただ、同時期に公開された「女の友情物」であった『花とアリス』の方が、僕は断然好きです。あの映画もナチュラルなのは同じなのですが、ドラマがあるのですね、確実に。 榎本加奈子、藤田陽子のお二人は、悪くない出来だと思いますが、欲を言うとやっぱり深みがない。 「ナチュラル」というところはクリアできた。でも、その先にはもっと深い演技の世界があるのだと思います。 最後に一言いうなれば、藤田陽子さんは、ロングの方が綺麗です。絶対。 lemonsong

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